第1話 男の傷は男で埋めろって言うじゃん


 大型連休。ゴールデンウィーク。色々な言い方はあるが、この連休は俺と聖川にとって苦痛でしかなかった。というか、俺は苦痛で聖川は常に苦痛なんだろうが。


「東雲···わたしどうしよ···」


 聖川は今日も今日とて俺の家で消沈していた。


「そのどうしよはもうクソほど聞いてる。そして俺は諦めろといつも返しているだろ」


「諦める···それしか無いのかな···」


「それも散々っぱら聞いた。そんで俺は寝取ったらといつも聞き返している」


「そんなのムリだよぉ···」


 大型連休中盤。月も代わったばかりの晴れ日。宿題を片付けていた最中、我が一軒家に来客。絶望と悲壮感に溢れた顔の聖川が来た。追い返そうとしたが、あまりに可哀想だったので家に上げたのだが。


『友士達今日デートなんだって』


 の一言から始まったこのお通夜。


「だったら、新しい恋を見つけろ」


「なにそれ」


「アレだ、吊り橋効果で男を騙せ」


 俺は新しい提案を上げた。


「ついでに自分も騙してベッドイン。お前なら大抵の男は釣れるだろーよ」


「知らない男とセックスは無理」


「オイコラ直接的な表現ヤメロ」


「じゃあエッチは無理」


「変わんねぇよ!!つか、知ってる男なんて俺くらいしかいねーじゃん」


「そもそも、そんな簡単に別の人に乗り換えとか無理」


「ほら、男の傷は男で埋めろって言うじゃん。うまいことやれば良いって。お前が失恋しようが、新しい男には関係ねぇって」


 いい加減、コイツの相手ばかりしているのも貧乏クジが過ぎる。俺が身動き取れない。


「じゃあ、東雲なら私の傷埋めてくれる?」


 ほとんど拗ねたように聞き返してきた。


「お前が良いならな」


 とっとと立ち直らせないと俺にも未来が無い。


「じゃ、これからデート行こ」


 こうして俺は負けヒロインの戦後処理


に付き合うことになる。というか、ずっとそうしてる。

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