第23話 別の異世界



 そこは、豊かな自然が広がる大地だった。


 空気がウマい!


 昨日読んだ資料で知識はあったが、聞くと見るとでは大違い。


 今日は近くのダンジョンへ向かい、1時間程度の探索をする予定だ。


 その中で、俺が知っている魔獣が居るかどうかを調べることになっている。


 歩きはじめて5分くらいでダンジョンの入り口に到着した。


「これよりダンジョンへ突入する。楕円防御陣形に変更」


 これも打ち合わせ通りで、ダンジョン内は横幅が狭くなるから、縦長の陣形に変更される。


 俺はヘルメットに付いているライトを点灯した。


 ライトと言っても電灯ではなく、光魔法が込められた魔道具で、ダンジョン内では必需品だ。



 ダンジョンに潜って10分くらい経ったが、まだ魔獣と遭遇していない。


 ここの魔獣は、シーカー初心者でも倒すことができる程度の強さらしいから、浅い階層には居ないのかもしれない。


 ダンジョン内の横幅は10メートルしかないから、護衛の人がやたら近い。


 気心の知れたパーティーメンバーならともかく、ガチガチの軍人さんだとどうも落ち着かない。


 護衛の人たちは、ランク1だからと気を抜くこともなく、真剣に行動している。


 これが軍隊なんだなと、妙に関心してしまった。


「接敵。数2。前方15」


 やっと魔獣が出てきたようだ。


 俺は目を細めて前方を睨む。


――――パン、パパン。


 誰かが発砲したようだ。


 前方に居た2体の魔獣は、頭を撃ち抜かれて崩れ落ちた。


 軍にしか許可されていないが、異世界用の銃器を訓練場で何度か見たことがある。


 俺たちにも使わせてほしいものだが、残念ながら国際法により禁止されている。


 詳細までは見えなかったが、今の魔獣はオーク型だろう。


 さっきの魔獣は、事前情報として写真で見ていたからオーク型だと判断できたが、事前に知らなければオークだと気が付かないかもしれない。


 手長猿のように腕だけが異様に長いオーク型で、かなり歪な容姿だ。


 俺の知っているオークとは、まったく異なる形状をしている。



 それから10分くらい経って、地下2階へ降りる階段に着いた。


「想定より時間が経過していません。下に降りてみませんか? どうでしょう?」


「了解した。地下2階へ降下する」


 岩沼さんの問いに隊長さんが答えた。


 事務員が隊長に指示を出すって、どんな命令系統なんだろう?


 岩沼さんって、実は偉い人?



 その後は3度魔獣と出会っただけで、今日の探索は終了になった。


 エンカウントした魔獣はオークだけで、俺は少しガッカリした。


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