第05話 魔力渦



 魔力渦が全世界に出現した数日後。


 各国政府が対応に頭を抱えていた。


 日本の企業”魔力研究所”が日本政府の記者会見の場で、魔力渦に関するさまざまな調査結果を発表した。



 魔力渦は、別の世界に通じる扉のようなものだが、こちらから異世界へ行くことは困難。


 魔力渦からは”魔力”が溢れ出ている。


 魔獣が使う魔法を発動するために必要なモノが魔力。


 この世界には存在しなかったモノ。


 魔力渦を通って異世界へ行くためには、人の体内に魔力が循環している必要があった。


 人類は魔力渦の向こう側へ行くことができない。


 ただ一人、

魔力研究所の副所長、大金おおがね 悠真ゆうまを除いては……。



 当時、魔力に適応できる人は全世界で50人ほどしか見つからなかった。



 魔力渦の通過には、もうひとつ大きな問題があった。


 金属のたぐいを持ち込むことができなかったのだ。


 金属加工品を内蔵する物は、魔力渦ではじかれこの世界に残ってしまい、異世界に持ち込むことができない。


 俺たちの文明は、電気と金属依存の文明だ。


 便利な道具やあらゆる物に金属を使用している。


 魔獣と戦うための武器や防具、あらゆる機器。


 異世界で必要になるであろう、さまざまな物を持って行くことができなかった。


 俺が異世界に召喚された時、スマホとか色々な物がなくなってたけど……。


 まさか、ズボンが消えていたのはチャックのせいなのか?



 魔力研究所は、金属未使用のフィルムカメラを開発(復活?)していた。


 それは大昔の技術だった。


 感光フィルムと呼ばれるものに画像として記録できるもので、紙とプラスチックで作っていた。


 そのカメラで異世界の様子を撮影した画像も公開され、全世界に驚きが広がった。



 どうして金属が魔力渦を通過できないのかは、現在でも解明されていない。



 この会見の後、魔力研究所に世界各国は資金援助や協力体制を申し出た。


 それがあり、現在の国連組織の基礎を魔力研究所が主導して作り上げた。



 これが、2100年からはじまった”魔力災害”の歴史だ。


 確かに魔力研究所の功績はとんでもなく大きいと思う……。


 用意が良すぎて怪しい気もする。


 でもなー、俺は魔力研究所の所長、大金おおがね 陽菜乃ひなのを知っている。


 俺がハマった、全世界で大ヒットしたゲームの開発者だ。


 大金陽菜乃の名を知らない人を探す方が大変じゃないか? そう思えるほどの有名人だった。


 美人で頭が良くてお金持ち。


 男のロマンが詰まった人だよなー。


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