第03話 どうしてこうなった?



――――シュッ。


「気分はどうですか?」


 医者がやってきて、分かりきったことを聞いてくる。


「変わらず最悪だ」


「あなたの身元確認が取れました」


「それは良かった。そろそろ自由にしてくれるのか?」


「すみませんが、まだ拘束を解くことはできません」


 そろそろ、身体を動かしたい衝動がこみ上げてくる。


「あなたが別の世界へ行ってしまったのは、何歳の時か覚えていますか?」


「よく覚えてる。

 高校に入学するはずだったから、16になったばかりの時だ」


「その年が何年だったか覚えていますか?」


「それもよく覚えてる。

 来年が2100年で区切りのいい年だったから、2099年だ」


「あなたが別の世界で過ごしたのは、体感で3年くらいでしたね?」


「それくらいだと思う」


「それでは。あなたの体感では、今は2102年ころ。でしょうか?」


「回りくどいな」


「認識の確認です。これも規定事項ですので了承してください」


「そうだな。そんなもんじゃねーの?」


「これから、あなたにはショックで辛い事実をお伝えします。落ち着いて聞いてください」


 もしかして、ここは元の世界によく似た別の世界なのか?


 だとしたら嫌だな……。


「あなたがこの世界から消失したのが2099年のことでした。

 そして、今は2125年です」


「えっ?」


「あなたが別の世界へ行ってしまってから、26年が経過しています」


「なっ……、なん……だって?」


 イヤイヤ。それはおかしいだろ!


 意味がわからない!


「混乱されているでしょうから、私は席を外します。落ち着いたら知らせてください」


――――シュッ。


 26年だと?


 すると……。


 俺は42歳のオジサンってことか?


 あり得ない。


 いや。自分の姿を見てない。


 確認は……していない。


 俺は、知らない間に浦島太郎の玉手箱を開けてしまったのか?


 医者が言葉を選んで接していたのは……。


 いきなり自分の姿を見たらショックが大き過ぎるからなのか?


 なんてこった……。


 俺は人生の半分以上をムダにしたのか?


 異世界での経験は、この世界では一生かけても経験できないことばかりだった。


 精神年齢は高くなっていると感じていたが……。


 それにしてもいきなり40超えとはなぁ。



「すまない。取り乱したが落ち着いた。自分の姿を確認したい。鏡で見せてほしい」


 その後、医者が持ってきた手鏡で自分の顔を見たが、どう見ても40過ぎのオヤジには見えなかった。


 記憶の中にある自分の顔だ。


 医者の説明では、この世界と俺が行っていた異世界とで、時間の流れが違うらしい。


 まだ正確な計測はできていないらしいが、異世界での1時間は、この世界での8時間くらいになるようだ。


 異世界で3年くらい過ごした俺は、26年後の世界に戻って来たようだった。


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