第4話 行方不明

夜の帳が下りてもステファニーは帰宅しなかった。エスタス公爵家が王宮に問い合わせたところ、もう3時間も前に下城したことがわかり、捜索が始まった。


私室にいたエドワードは、ステファニー行方不明の知らせを聞いて王宮を飛び出す勢いだった。それを止めたのは、エドワードの幼馴染でもある側近リチャードだった。


「エド、待ったほうがいい!近衛騎士団が捜索に行っている。エドは救出の知らせがあった時のために王宮にいるべきだ」


「ただ待っているだけなんてできない!今こうしている間に彼女に何が起こるかと考えると・・・」


「エドが捜索に加わると、エドを守るために騎士を割かなくてはならなくなる」


「つまりは足手まといと?」


「まぁ、身も蓋もないことを言うと、そういうことになるね。それよりもステファニー・エスタス公爵令嬢との婚約をどうするか、陛下に根回ししておくほうがいいかと思う」


「まさか・・・?!」


「王家には純潔の女性しか嫁げないことになっているから、最悪の可能性も考えたほうがいいかと・・・」


「そ、そんな!・・・彼女が今、そんな目に遭っているって言うのか?!」


「仮にそんな目に遭っていなかったとしても、誘拐の場合はそれだけで純潔が疑われる」


「僕は彼女を絶対諦めない!」


「そうは言ってもお前の立場じゃ諦めるしかなくなるだろうな・・・」


「そんなことにならなければいいが・・・本当にこんな立場に生まれたことを時々呪いたくなる・・・」


「逆にそんな立場になりたいって悪巧みしそうな輩も結構いるけどね」


王家の遠縁の高位貴族達は、エドワードが王位継承権を返上したとしたら、大喜びして熾烈な王位継承争いをするだろう。


「だから僕もこの立場を簡単に放棄できないんだ。国に内乱を起こすわけにいかないからね。もしこれが誘拐事件だとしたら、王家の遠縁の陰謀だろうか?」


「まぁ、動機がありそうな貴族は山ほどいるけど、王位継承権の問題よりも、一番考えられるのは、ビビアン嬢のヒエームス公爵家だね」


ビビアン・ヒエームス公爵令嬢は、エドワードに惚れていた。でもビビアンの父は娘の意向とは関係なく、家門の勢力拡大のために娘を王太子妃にするのを諦めていなかった。彼はなんとかステファニーをエドワードの婚約者の地位から追い落とそうと画策していたが、今まで成功していなかった。


「まさか、いくらなんでもそこまで愚かなことをヒエームス公爵がするとでも?!」


「それかビビアン嬢との共犯か、それどころか単独犯の可能性もありうるかもね。色々ステファニー嬢の悪口を広めているらしいし」


「仮にステフィーと婚約解消しなければならなくなっても、ビビアン嬢とは絶対に結婚したくない。あれだけステフィーの悪口をまき散らしていたんだ。そんな女性を妻にしなきゃいけないぐらいなら、一生独身がいい」


「お前が一生独身ってのは、唯一の王位継承権保有者としては無理だろうな」


「・・・とにかく父上の所に急ごう」


2人は王の私室へと急いだ。

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