第24話 これがゴブリン式
「うーん。どうするかね」
普段の森の中の狩り。周囲にはダンガールボアを殴っているゴブリンやゴブリンウォーリアーたちがゲキャゲキャ言っていた。
いつも通りの手法で俺が囮となって狩りをしていた。
そんな中、俺は考え事をしていた。
目標であるゴブリンキングになるには、結局ゴブリンキングになれる場所を確保する必要がある。おそらくそのためにはもうちょい森の奥に行かないといけないんだよなぁ。
この森は奥に行けば行くほど気が大きくなり、それに伴って密度もわずかにだが薄くなる。
これは魔物の大きさが大きくなっていくことも意味している。
実際、ほどちゃんに聞くと平均的な大きさはどんどんとでかくなるらしい。そうなれば食料も困らなくなる可能性は高い。
今ある複数の集落を一つにまとめることも可能だろう。
それによくあるゴブリンキング発生地点ももうちょっと内側らしいしな。
だがもしそこの場所にゴブリンキングがいたらどうする? 候補地点に居座っていたら。
ひとまず逃げるしかないか。 毎度のことの様子見だ。
ゴブリンキングには、たぶんまだ勝てない。いくら3倍とはいえ、所詮はもともとゴブリンチーフだもの。
得体を持つゴブリンキングに、さらに所持しているスキルの配下の力をわずかに得るというものが加わったら絶対に勝てないだろう。
まぁ要は配下が多くいればいるほど強くなるというものだ。俺のゴブリンチーフも持っているスキルだしな。
とりあえず調査隊を作ろう。やってみる価値はあるな。
配下のゴブリンがまた退くことを恐れたり、それをするようなリーダーについていけないとか言い出したら殴って矯正しよう。
なんか最近殴り足りないしな。これがゴブリン式や。
と、そんな風に考えていながら拠点へ戻ると、なぜかその拠点が占領されていた。
ゴブリンキングによって。
どうしようか考えていたら向こうから来た時って、それは運がいいのか悪いのか。
「なんだあれ…」
俺の拠点を占領していたのは巨大なゴブリンだった。
ただ、ウォーリアー系というよりかは、メイジ系の巨大なゴブリンだ。
体は俺の2倍いかないかくらいだが、頭にイノシシの頭蓋骨の兜をかぶっており、背にはまたイノシシの毛皮をマントにしていた。
そして一番目立つのが手に持っている杖だ。
こん棒ではない。こん棒としても使えるのかもしれないが、明らかに持ち方は杖だった。
それに先端には何らかの石が装飾されている。スキルの一つとして使われるのか。
「メイジ系統のゴブリンキングです。ハイゴブリンメイジに隷属状態です」
ほどちゃんが気になることを教えてくれた。
「は? ハイゴブリンメイジ?」
「はい」
「なんでそんなのがこんなところに出張ってくるんだよ…」
ハイゴブリン自体はもうちょっとダンガール大森林の中央部にいるとは聞いていた。彼らは一部を除いてこの森のトップに立っている存在だ。
まぁ、この森自体が世界全体では中の下といったところでそれほど強くないのだが。
そんな彼らに喧嘩を売った覚えはないが、たまたま彼らの目に止まったか。
運が悪いなぁ。いや最初から運は悪かったか。ゴブリンに転生してるんだし。
「ハイゴブリンメイジは近くにいるのかな」
俺は周辺を見るが、それっぽい奴は見えなかった。隷属状態とはいえ近くにはいないのかもしれない。
「来ているのがゴブリンキングとはいえ、勝てそうかね」
「メイジ系統のゴブリンはスキルの幅が広いために刺されば完封される可能性があります」
「手数の多いほうが有利なのはどこも同じか…。それで」
「何縮こまってるんだぁ! 俺にビビったのかぁ」
こちらに気づいたのか、ゴブリンキングはこちらに挑発を仕掛けてきた。
しまった。ほどちゃんに詳細を聞くのが遅れた。
俺の周囲のゴブリン達は俺が立ち止まってほどちゃんと会話をしていたのを、ビビっていると判断したのか。若干目が冷えてきている。
さすが下克上上等な奴らだ。あとで殴ってやろう。
最近こんな奴らばかり相手にしてきたからSっ気が出てきているのだ。
もしSになりたいならゴブリンに転生するといい。周辺殴り放題だ。俺の一押し。
様子見する予定だったが、さすがに本拠地までこられると方針が変わる。
ここで退いたら、再び集めるのが大変になる。
俺はゴブリンキングの方へと行って問いかけた。
「俺の領地で何をしている?」
「そりゃさっきまでのことだぁ! 今は俺の領地だ!」
周囲を見ると、今朝まで俺の配下だった奴らが、すでに相手の配下となっていた。
こいつらぁ~!!!
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