第11話 盾は大事


ねぐらになっている、木の根の穴倉に戻ってきた。


ゴブリンたちが、疲れた様子になりながらも虫とかを取っている姿が見える。

あいつらまだ動けるのか。俺ですら疲れが見えるのに元気だな。


今日は成果なしか。いや目的であるレベルアップはしたか。

完全に想定外だったし、思わぬ危険もあった、というかありすぎた。


一歩間違えれば誰か死んでたよなぁ。 今日はゴブリンCも含めて皆運がよかった。


こいつらに生意気さを感じつつもかわいげが出てきたし、あっさり死ぬのはちょっと気が引ける。


けど最下層の通称経験値なのだから、そこまでの思い入れはしちゃダメなんだろうな。


で、あのダンガールスモールボア倒してどれくらいレベルアップしたんだ?


「ほどちゃん、俺、今何レべ?」


「現在6レベルです」


「あれ、案外上がってる?」


「上昇レベルの数値は基本的にキルレシオから算出されます。30:1を6人で倒したので、一人当たり5レベル上がってます」


「まじか…。結構上がりやすいんだな」


「いいえ。キルレシオ比率が圧倒的に不利な相手に戦いを挑み、倒すケースはゴブリンを除いて稀です。」


「そりゃそうか。普通のやつはそんなキルレシオのやつに真っ当に戦えば命がいくらあっても足らんしな。ゴブリンだけか。」


最初に見たケンタウロスは500:1らしいが、たぶん若者ということでもうちょっと下がるんだろうな。大人は手を出していなかったように見えるし。それが普通の狩りであり経験値集めなのだろう。



ん? 6人?


「あれ、ゴブリンCも上がってる?」


あいつ初っ端に吹っ飛ばされて終わったんだが?


「はい。先制攻撃は経験値の権利が認められます」


「なるほど」


ただ突っ込んだだけみたいだったが、一応は攻撃だったってわけか。まぁ打ちどころがよかったとしても、勢いよく吹っ飛んでたしな。


また、今思えば結構あっさり勝てたダンガールスモールボアだったが、ほどちゃんによればキルレシオ30:1にはそれなりの理由があった。


基本集団で襲うゴブリン達は正面からダンガールスモールボアに挑み、怒らせて、あいつの持つスキル《憤怒》《底力》《突進Ⅲ》のコンボによってひき殺されるらしい。


場合によっては一発で数十人を殺すこともあるとか。

まぁ、その代わり《憤怒》スキルによって普段持っている高い防御力が一気に下がり、《底力》も二発三発目は威力が下がっていくらしいが。


ゴブリン達でもダメージを与えられたのはそこに理由があるんだと。

最初に木の上に登ったのは賢明だったな。そして木が意外と丈夫だった。




「次、どうするかなぁ」


森をちょっと歩くだけでこれだ。さっきも言ったが今回は運がよかった。

ぶっちゃけ万が一の盾として飼っているゴブリン達が普通に死にかけてるんだよな。万が一じゃなくなってる。次も6人で帰れるとは限らん。


ダンガールスモールボアに襲われて、そのあとはグリフォンにも襲われて・・・。

次はオオカミか何かか? もしくは一気にワイバーンとか行くかもしれん。このペースならありうる。


何か強化を図らないと、あっさり死んでしまうかもなぁ。


何があればいい? 魔法? 魔法も欲しいがそれ以上に武器が欲しいんだよな。


「多分、丈夫なナイフ一本あれば、俺の身体能力ならこの森で生きていける」


一人ならという言葉が付くが。


あの頑強スキルの全能感が忘れられない。普通にそこら辺のやつは相手にならないという確信があった。

まぁけど、そこら辺の普通のやつが毎回来てくれるという保証はないが。 というかさっきのセリフはフラグだな。


…気を引き締めよう。やっぱし、盾は大事にしていこう。

俺は遊んでいるゴブリン達を優しい目で見た。



「あー どうすっかなぁ」


あー。いいよなぁ、グリフォンは。あんな人が必死になって倒した相手をパクるだけで生きていけるんだから。


そういえば、あのグリフォンあんな短い翼でどうやって飛んでるんだ? あの巨体を浮かすにはどう考えても翼の長さが足りないのだが。


「あのグリフォンってどうやって飛んでたの?」


「グリフォンはスキル《飛翔Ⅳ》によって、自身の飛行能力を強化しています」


「スキルねぇ。スキルがあれば俺も飛べるの?」


「はい。ただし、種族特性に合わないスキル開発には魔法素養が必要であり、また種族特性が弱体化する可能性があります」


「どういうこと? 魔法素養があればスキル開発し放題なの?」


「はい。スキルとは魔素励起によって生じた現象を簡易化したものです」


「???」

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