第6話 下克上はゴブリンの文化です。

幼いゴブリン達がゾンビのように這ってこっちに向かっていた。

今まで気づかなかったが若干うなりながらだ。俺を威嚇しているのか。


だが、何となくだが助けを求めているように聞こえる。そういう感じのうなり声だ。

うなり方で何を求めているかわかるなんて、俺ゴブリン博士にでもなれるんちゃうか? 


「助けを求めてるのかこれ?」


「はい。庇護を求めています。」


ほどちゃんがいった。



「え?」


「ゴブリンは同族の上位者には敏感で、その下に就くことがままあります。子供は親がいればそのまま親の下につきますが、今回のように親が不明で子供ばかりの場合は、その場で上位者を決めます。そしてあなたが選ばれました」


「なるほど…」


庇護、庇護ね。まぁ、ゴブリンキングの条件としてはいいか。

ここから俺とおまえ達で始まる幼馴染としての友情物語だ。多分途中までだが。

俺途中でゴブリンやめる予定だし。


「というか、今の説明だと親が弱かったら親に従わないの?」


「はい。ゴブリンの文化では親が生きていれば親殺しは高確率で発生します」


こっわ。敬老の日を作ろうか。365日分。父の日でもいいな。プレゼントが包丁じゃなくなるなら何でもいい。友情物語もここで閉幕しとこう。


「まぁ、どちらにせよゴブリンキングになるのだから配下は必要なんだが、今の俺にできるのかね。」


一応チートを使えることは確認したが、一日を過ごせるのかどうかは確認していない。

身の安全は確保してないし、飯もまだ食ってないんだが。


というか、ゴブリンって何喰うんだ? よくファンタジー小説だと人間食ってるんだけど、ここら辺人間いないなら無理だよね。


「ゴブリンって何食べるの?」


「主に虫や魚、果実、肉などです。」


「一気にゴブリンが猿っぽくなったなぁ…」


まぁ、そりゃそうだろうけど。ゴブリンがみんな人間食ってたら人間絶滅するだろうし。


「なんていうかさ、ほら角ウサギとかは食べないの? 物語とかの序盤でよく出てくる魔物なんだけど」


そんぐらいの、せめてファンタジー生物はファンタジー生物を食してほしい。


「食べることはありますが、ゴブリンと角ウサギの成体のキルレシオは1:1です」


「馬鹿すぎる…。 哀れでしかないな、おい。」




とりあえず、そこらへんでとった虫を食べさせることにした。頑強スキルがあれば余裕だった。


だが差し出しても食べなかった。


「食べないぞ?」


「上位者が先に食べる習性があります」


「うげ…」


先に食べさせることで毒見させようとしたのに…。


「これは食えるの?」


「はい。これはゴブメコンバッタ。多くのゴブリン族の好物の一つ。これを食べないとゴブリンとして認めない部族もあります」


「なんで俺はセルフで異文化交流せんといかんのだ。というか別に認められなくてもいいけど…」


まぁけど食えるなら、食えるなら食おう。ほどちゃんが言ったんだ。そう。神級下位スキル《鑑定》のほどちゃんが言うなら間違いない。間違いない。間違いないんだ…。


バッタと目があう。つぶらな瞳でこちらを見ている。俺はその目を見ずに後ろ半分を食べた。


う。。。苦みと変な液体が口の中に広がる…。


ん? あれ? けど悪くないぞ? おいしさが口の中に広がってる。


案外うまいかも? けど焼いて食べたいわこれ。焼いて塩コショウで食べてみたいかも?


味覚、変わってるのかなぁ。あり得るな。下の感覚なんて動物ごとに違うだろう。基本的にその動物にとって必要なものがうまいものになっているのだし。


俺残り差し出すとゴブリンは食べた。うまそうに。めっちゃ笑顔だ。

よかったな、おいしいもの食べれて。だから俺に下克上するなよ。




その後、他にも生まれていたゴブリンがいたので、森と平野の境目にある近くの木の根元の穴とくぼみっぽいところに移しておいた。全部で五匹だ。


とりあえずここを拠点とする。狭いが、本格的な拠点は後だ。


全員と儀式を済ませた。まぁ、ゴブリンなんて結構すぐ死ぬ可能性が高い生物だろうから、程よい距離間で生きていこう。


正直、俺はゴブリンを仲間とは思えない。俺は元人間だし、人間として暮らしていきたいわけだから。

だから、つかず離れず、これでいいんだと思う。





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