第12話 嫉妬

 ――土曜日――


 今日は10時から彩乃とデートだ。


 リビングの時計に目を向けると、『9時38分』と表示されていた。

 そろそろ集合場所に行くか。


 鏡の前でちゃんと身だしなみを整えてから玄関に移動する。

 玄関で外靴を履いて待ち合わせ場所に向かう。

 待ち合わせ場所は近くの公園だ。


 しばらくして近くの公園に到着した。

 公園には滑り台、ブランコ、ベンチが見受けられた。

 ベンチに視線を向けると、私服姿の彩乃がいた。

 アイツ、先に来ていたのか。


「あっ、雄太っ!」


 俺に気が付いた彩乃はキラキラと目を輝かせる。

 嬉しそうだった。

 彩乃はベンチから立ち上がってこちらに近寄ってくる。


「おはよう、雄太っ♪」

「うん、おはよう、彩乃。え? あっ、ちょっと!? 彩乃!?」


 突如、彩乃がギュッと俺のことを抱きしめてきた。

 ムニュっと二つの豊満な果実が身体に押し付けられる。


「お、おい……ここは外だぞ?」

「いいじゃん、別に♪ 雄太もアタシとハグすんの好きでしょ?」

「そりゃ好きだけど……」


 俺はそう言って、ギュッと彩乃を抱き返す。

 すると、彩乃は「えへへ」とはにかんだ笑顔を浮かべる。

 その笑顔が眩しすぎて思わず顔を背ける。

 今日の彩乃はマジで可愛いなぁ……。


「お前、いつからこの公園にいたんだ?」

「朝の4時からずっとここにいたよ」

「は!? 朝の4時!?」


 集合時間は午前の10時だ。なのに、彩乃は午前の4時からこの公園で俺のことを待っていたらしい。


「ずっとここで俺を待ってたのか?」

「うん、そうだよっ」

「お前な……寒かっただろ?」

「大丈夫、大丈夫。全然平気だよ。ここで雄太を待つの凄く楽しかったもん」

「そ、そうか……」


 今日の彩乃はちょっと変だなぁ……。


「あっ、そうだ。雄太、写真撮らない?」

「写真?」

「うん、大好きな雄太との思い出が欲しいんだ。だから写真を撮ろう、ね?」

「別にいいけど……」

「えへへ、ありがとう」


 女の子は写真撮るの好きだよなぁ。

 なんてこと思っていると、彩乃はスマホを取り出してカメラアプリを開く。


「じゃあ撮るよ?」

「お、おう」


 彩乃はスマホの位置を調節して撮影ボタンを押す。

 すると、カシャっとシャッター音が鳴り響く。

 撮影が終わったのだ。


 彩乃のスマホに目を向けると、俺と彩乃のツーショット写真が目に映った。


「いい感じだね」

「だなぁ」

「この写真見たらあの女嫉妬するだろうなぁ。ふふ、ふふっ♪ あぁぁ~、楽しみだっ」

「あの女? 誰のことだ?」

「ううん、なんでもないよ。気にしないで」






◇◇◇





【真奈美 視点】



「雄太くんっ……」


 雄太くんのことを考えると、頭の中がクラクラする。

 雄太くんのことしか考えられなくなる。

 もう雄太くんがいない生活なんて考えられないよっ。


 雄太くんに会いたい。

 雄太くんの声を聞きたい。

 もっと彼とエッチぃことしたいっ。


 雄太くんっ、雄太くんっ、雄太くんっ、雄太くんっ、雄太くんっ、雄太くんっ、雄太くんっ、雄太くんっ、雄太くんっ、雄太くんっ、雄太くんっ、雄太くんっ、雄太くんっ。


 早く雄太くんの子供が欲しいよ。

 私はヨシヨシと自分のお腹を撫でる。


「ん?」


 突如、彩乃ちゃんがメッセージを送ってきた。

 私はスマホの画面をタップして、彩乃ちゃんのメッセージを確認する。

 

『今日、雄太とデートしたんだ。ふふ、羨ましいでしょ?』


 彩乃ちゃんが一枚の写真を送ってきた。

 その写真には私服姿の彩乃ちゃんと雄太くんが写っていた。

 彩乃ちゃんと雄太くんのツーショットを見て、私は絶句する。


 コイツっ、雄太くんとデートしたのか……。


「……この女、本当にむかつくっ。消えろっ、消えろっ、消えろぉぉっ!」


 私はそう言って思いっきり部屋の壁を蹴る。

 すると、部屋全体にドンっと衝撃音が鳴り響く。


「消えろっ! 消えろっ! 消えろっ! 消えろっ! 消えろっ!」


 私は何度も部屋の壁を蹴る。

 

 彩乃コイツのせいだ。

 コイツのせいで私と雄太くんの関係は壊れてしまった。


 なんでこの彩乃クソビッチは私と雄太くんの邪魔するのかな……。

 コイツがいなかったら、雄太くんを独り占めできるのにっ……。

 

 突如、スマホからブルブルとコール音が鳴る。

 彩乃ちゃんが電話してきたのだ。

 私は深呼吸をしてから電話に出る。


「もしもし、彩乃ちゃん……?」

『うん、そうだよ』


 スマホのスピーカーから彩乃ちゃんの声が聞こえてきた。


『さっきの写真、見てくれた?』

「うん、見たよっ……雄太くんとデートしたの?」

『うん、そうだよっ。大好きな雄太とデートしたんだ。一緒にゲーセンで遊んで、ファミレスでお昼ご飯食べて、ラブホテルでたくさんエッチぃことしたんだっ』

「……」


『今日の雄太は本当に凄かったなぁ。連続で10回もアタシのこと求めてきたんだよっ。ふふ、アタシの彼氏凄いでしょ?』

『アタシの彼氏? 何言ってんの? 彩乃ちゃんの彼氏は雄太くんじゃないよ。雄太くんと付き合ってるのは私だもん。彼は彩乃ちゃんのモノじゃない。私だけのモノだもんっ」

『違うっ! 雄太は真奈美アンタのモノじゃないっ! 雄太と付き合ってるのはアタシだもんっ!」

「……」

「今日もたくさんアタシのこと求めてくれたもん。『彩乃、大好きだよ』って言いながらキスマークたくさんつけてくれたもんっ。アタシと雄太は両想いなのっ! お願いだからアタシと雄太の邪魔しないでっ!』

「違う、違う、違うっ、違うっ。雄太くんと彩乃ちゃんは両想いじゃないっ。雄太くん、彩乃ちゃんのこと『好きじゃない』って言ってたもん」

『は? 雄太がそんなこと言うわけないでしょ。嘘つくな、このクソビッチ』

「嘘じゃないっ、本当だもんっ。雄太くんからすると、彩乃ちゃんは手軽にヤれるクソ便器なんだよっ。雄太くん、『彩乃のことは好きじゃないよ。アイツはお手軽オマ●コだ』っていつも言ってるよ?』

『雄太がそんなこと言うわけないだろぉぉぉっ! お前っ、本当にむかつくんだよっ!! なんで……アタシと雄太の邪魔ばっかりするのかな!! マジでウザいっ! 消えろぉぉ!』

「彩乃ちゃんが私と雄太くんの――」


 彩乃ちゃんは私の言葉を無視して通話を切った。

 部屋全体が静まり返る。


「ちっ……あのクソビッチ、マジでムカつくっ。消えろっ、消えろ、消えろっ、消えろぉぉぉぉぉぉ!!」


 イライラしすぎてスマホを床に叩きつけてしまった。そのせいでスマホの画面がバキバキに割れてしまう。

 あっ、ヤバいっ、スマホの画面を割ってしまった。彩乃ちゃんのせいだ。

 全部、あのクソ女が悪いんだっ。

 許せないっ、あのクソ便器だけは絶対に許さないっ。









 次話『暴走』

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