第10章 ー激突ー

「おいおい、久しぶりの再会なんだ。少しは話そうじゃねぇ・・・か!!」




キバカゼはカタナを振ってタチカゼを吹っ飛ばす。タチカゼはそれに合わせてバックステップをして


うまく力を逃がし、距離をとって地面に着地した。




「グレイス!?キバカゼ??どう言う事ですか!?」




ガーネットは誰とでもなく聞いた。




「・・・さっきタチカゼが自分を助けたゲリラ部隊員がいたって話してただろ?それが今、目の前にいる男・・・先代蒼の風頭領・・・キバカゼだよ!!」


「そんな・・・・・・!?」ガーネットは混乱している。


「へ!『グレイス』だぁ!?しゃれた名前名乗ってんじゃねぇか!!」




タチカゼがキバカゼを挑発する。キバカゼはそれに乗る事もなく、いつも通りの調子で返した。




「まさかイドでキバカゼなんて名乗る訳にはいかないだろう?かっこいいだろ、グレイス。


正に外国の人の名前って感じでよ!」


「・・・何故裏切った?」タチカゼは真面目な顔になり、静かな声で聞いた。


「言っただろう、守りたい人がいると・・・イド帝国にな」


「姫様が、兄様の従者がどうとか言ってたよな?その兄様ってのが守りたい人なのか!?」


「・・・・・・」キバカゼは何も答えなかった。代わりにカタナを正眼に構える。


「おしゃべりはここまでだ・・・会っちまったんだから、戦うしかねぇよなあ!」


「・・・昔の俺だと思っていると痛い目見るぞ!!」タチカゼも正眼に構え、キバカゼと向き合った。


「クゥアクゥアクゥア!!」クロウがその相対する姿を見て笑った。


「ではこちらはこちらで始めるとしましょうか?ガーネット王妃を誘拐しようとした愚かな賊として罰を与えねば、ねぇ」




クロウはオンジに向けて不気味な笑みを浮かべた。




「誘拐犯か・・・いいだろう。ガーネット王妃の為なら喜んで誘拐犯の汚名を被ろう!」




オンジはガインン!!と両腕のガントレットを胸の前で叩き合わせた。




「それじゃあ、こっちは女同士仲良くしましょ?」シャオ・リーがセツナに大剣を向けた。


「そんな大剣振り回してたら、腕に筋肉付いちゃうんじゃないの?」




といいながらセツナは二丁拳銃を構える。




「ご心配なく。ナノキューブが大剣を振るう時だけ筋肉を肥大化させてくれるのさ!」


「ナノキューブの精密操作・・・か。やっかいだねぇ・・・。」




ここに3組の戦闘が始まろうとしていた。


風が、睨み合った3組の間を通り抜けていく。木の葉が中に舞った。その葉がゆらゆらと空中で


揺れて、ゆっくりと地面に落ちた。


と、同時に最初に動いたのはタチカゼだった。


一気にキバカゼとの距離を詰め、カタナを地面に向けて思いっきり振り上げた。




『不知火流、一刀・土龍どりゅう』!!地面を抉りながら振り上げられた太刀筋は土砂と共に


土煙を上げ、キバカゼの視界を遮断した。それを空中に飛び上がって、逃げるキバカゼ。


そのすぐ後をタチカゼも飛び上がり追った。




「空中じゃあ、身動きとれないってか?甘いな!」




キバカゼは器用に空中で背中を反りながらカタナを振り上げ、タチカゼ目掛けて思いっきり振り下ろした。そこにカタナの腹の部分に腕を乗せ、更に荷重と加速を加える。




『一刀・雷電らいでん』!!




タチカゼは重い一撃を何とかカタナで受け止めたが、そのまま地面に猛スピードで落っこちていく。


地面にぶつかる寸前、体を捻って片腕で地面に着地しすぐ体制を整える。


キバカゼもそれに追従すように地面に静かに着地した。それを狙い澄ましていたタチカゼが距離を


詰める。キバカゼの目の前で体を背中が向くぐらい、思いっきり捻った。




『一刀・遊独楽あそびごま』!!




遠心力を利用して、超スピードの横薙ぎがキバカゼを襲った。キバカゼはバックステップをしたが間に合わず、カタナで受け止めた。そのまま後ろに吹っ飛ばされたが体制を崩す事もなく、地面に着地した




「おー痛ぇ、手が痺れた。やるじゃねぇか、タチカゼ!だが『遊独楽』は相手の体制を崩してからじゃないと意味がない、相手に背中も見せるから隙も多いしな。教えたはずだぜ。」




キバカゼとタチカゼは同時にまた正眼の構えを取る。キバカゼは余裕のある涼しい顔でタチカゼを見据えた。それに対して眉間に皺を寄せ、フゥーと息を吐くタチカゼ。ポタッと冷や汗が地面に落ちた。




「俺の教えた『不知火流』、だいぶ磨きがかかってるじゃねぇか。いいねぇ、次は何を見せてくれるんだ?タチカゼ!!」




それを見守っていたクロウとシャオ・リーも動きだす。




「おっと、余りにも派手な打ち合いに見とれてしまいましたね。こちらも始めましょうか!!」




と言うと、大鎌を持ったクロウの腕の筋肉が体のサイズに合わない程2倍、3倍に膨れ上がった。




「な!?」オンジは驚きの声を上げた。




そんな驚いた顔を楽しむかのようににやけ顔で一気にオンジとの差を詰め、大鎌を振り下ろす。


オンジは両腕のガントレットでそれを受け止めた。


ギィンンンと金属音が鳴り、オンジの足元の地面がズシッと沈んだ。




「クゥアクゥアクゥア!!」クロウが笑う。


その人を馬鹿にしたような笑い声は余計にオンジを苛立たせた。


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