第43話 同棲!?

「ヒセキ店長のライブは俺も楽しみだ。絶対に開催させたい。俺が体張って開催できるのなら、この命を賭けたっていい」


「それはやり過ぎです」


「でもなんで俺に頼むんだ? 普通にボディーガードとか雇えばいいだろ。そんぐらいの金、余裕であるだろうし」


 あれだけの有名Vチューバーを抱えているのだ。金は潤沢にあるはず。


「こういう家族問題に企業が関わるのはあまり良くないんです。そもそも六道グループは大手企業、エグゼドライブはVチューバー業界という狭い世界で上に居るだけで、企業全体で見れば下の下。喧嘩売った場合、下手すればエグゼドライブごと死にます」


 つまるところ企業同士の戦いになるとまずいという話だな。

 逆に企業vs個人ならまだやりようはある、と。


 六道先輩が自費でボディーガードを雇うってのもアリだが、高校生の六道先輩じゃ年齢的な問題でボディーガードを雇うのは難しいだろうし……。


「我々が雇ったボディーガードが六道グループの誰かを傷つけた、その瞬間に、企業同士の争いになりかねません」


「……それは最悪のシナリオだな」


「昴先輩は私と契約したトラブルシューターではありますが、書面上では一切我々と関係ない存在。昴先輩が六道グループ相手に暴れたところで、エグゼドライブに影響を及ぼすことはない。あなたは唯一のジョーカーカードなのです」


 ……我ながらちょうどいい立ち位置に居やがる。


「わかった。引き受ける」


「ありがとうございます」


「じゃ! 今日から同棲生活よろぴくね!」


「は? 同棲!?」


「うん! もうキミの部屋はウチに作ってあるから!」


 俺は説明を求めて麗歌を見る。

 麗歌は慌てる俺に反して至って冷静で生意気な面で、


「当然、四六時中付きっきりで守っていただかないと」


「いや、いやいやいや! 無理だろ無理! 妹を家に1人にするわけにもいかねぇし」


「瑞穂ちゃんならウチで預かります」


「……アイツはブラコンだから、俺が一緒に居ないと嫌だって言うぞ」


「さっきメッセージ送ったら『全然いいですよ』と返ってきました」


「なんでお前が妹の連絡先知ってるんだ!」


「この前、家に尋ねた時に聞きました」


 くそ! 手が早い! 

 さ、さすがに1つ上の女の先輩と10日間同じ家で過ごすってのはきついぞ。


「おいおい青少年、自分の欲に正直になりたまえよ~」


 馴れ馴れしく六道先輩が肩を組んでくる。

 柔い横乳が腕に当たる……! この人羞恥心とかねぇのか!


「……こんなかわゆい子と1つ屋根の下になれるんぞよ? これほどハッピーなイベントもあるまい」


 六道先輩は少し背伸びをして、俺の耳に息を当てるようにして話す。


「……先輩はいいんすか、男子高校生なんて狼みたいなもんですよ……」


「……大丈夫大丈夫。女子高生なんてライオンみたいなもんだから!」


「……なにも大丈夫じゃねぇ」


 この人と四六時中一緒とか想像するだけで疲れるんだが。


「財閥令嬢の家だ。どうせ部屋はいっぱいあるんだろ?」


「はい。超高級マンションの一室を借りてます。多分、昴先輩の住居の3倍は広いですよ」


「そりゃ豪勢なことで。じゃあいいか」


 同じ部屋にずっと一緒とかじゃないなら何とかなるだろ。


「俺と六道先輩以外はいないのか?」


「はい」


「じゃあマジで2人きりか……」


「同情しますよ」


 あの無表情クールビューティー麗歌様が眉を八の字にしてマジで哀れんだ顔をしている。


「それでは明日の放課後からお願いします。必要な物、着替えとかは明日まとめて学校に持ってきてください」


「タオルとか歯ブラシとか、日用品は基本あるからいらないよ~。でもエッチな本とかはないから自分の持ってきてね。ウチはBL本しかないから」


 そういやヒセキ店長は腐女子(男同士の恋愛が好きな淑女のこと)だったな……。


「……あ、もしかしてすばるん、そっち系だったりする……?」


 ワクワクとした目で見てくるな。


「違います。ノーマルです」


「異性が好きなことをノーマルと言うのはコンプラ的にグレーゾーンです」


「……すみません! 女性が好きです!」


「それはそれで変態っぽいです」


「なんて答えりゃいいんだよ!」


「あはは! 面白いねすばるん! これは退屈しなさそうだね~」


 麗歌は俺に近寄り、小声で、


「……あと、このことは内密にお願いします。他言は無用で。お姉ちゃんやアオ先輩にも言わないでください」


「……瑞穂にはこの件のこと言ってないのか?」


「……はい。瑞穂ちゃんやお姉ちゃんには『昴先輩は友達のVオタク仲間とヒセキ店長楽曲応援振り付け特訓合宿をする』と言ってあります」


「……それを信じたのかあのアホ共は」


 普段の俺のV狂い振りからすりゃ不思議でもないか。


「他の人にもそう言っておいてください」


「……りょーかい」


「ちょっと! ボクに内緒で何の話? 混ぜて混ぜて!」


「もう話は終わりました。では今日のところはこれで解散としましょう」


 こうして打ち合わせは終わった。

 明日から俺は七絆ヒセキ、ひいては六道晴楽のボディーガードになる。


 失敗はできない。


 俺の両肩には200万のバイト君(ヒセキ店長のリスナーの愛称)の想いが乗っている。それに何より、俺もライブが楽しみだしな。



 ――――――――――

【あとがき】

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何卒、拙い作家ですがよろしくお願いします!

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