一人では完成しない魔法の物語

想いは力になる――。

本作は魔法のある世界観、王政国家に生きる貴族令嬢を主人公に置いた、昨今流行りの悪役令嬢モノになります。
ただし、物語が始まった時点で追放済。隠していた能力を用いて、すでに自立の道を歩んでいるのが、追放シーンや自立の道程を山に持って来がちな他の作品とのちょっとした違いでしょうか。

じゃあ、どう物語を展開するんだと思うかもしれませんが、そう簡単に幸せになんてさせないのが悪役令嬢モノのお約束。

主人公のウィステリアには親兄妹はおろか、恩人のアッシュにも秘密にしている能力があります。
花屋の仕事を通じてその能力を発揮し、お客さまの悩みを解決していくウィステリア。しかし、花を買うお客には贈る相手がいて。
解決するにつれて能力を知られていくウィステリアに、権力の魔の手が伸びる――

ここまで聞くといくらでもダークな雰囲気になりそうな本作ですが、花という華やかな題材のおかげか、用いる花言葉のセンス、あるいは台詞の選び方……いずれかの効果でどこか柔らかな空気の作品となっています。
今後、どういった作風にしていくのか気になる一作でしょう。