第15話 計画2

 ある有名な大きな建物の会議室でプロジェクターを使って倉庫の映像と正孝から送られた電話からの音声を聞き取る。

 二十代半ばの近藤こんどう圭介けいすけが声をあげる。


 「間違いなく彼だ。漆 修也で間違いない。」


 「うむ、私もそう思う。」


  一人、仮面を被った女性橋本 《はしもと》かえでが頷く。

  だが、ここの会議室に集まっている八人の内の半分は解せないという面持ちをしていた。



 'どう考えても修也だろ!何に悩んでんだ?一体'



 風がひゅるひゅると聞こえるぐらい会議室は静まっていた。

 すると、誰かが喋り始める。


 「彼はそんなに強いのか?」

 

  ある女性が言葉を放つ。

  彼女は修也の同い年でここに集まっている会議室の中では最年少であった。


 「どういう事だ?」


 「もう一度、あの映像巻き戻して」


 バイクのヘルメットを被った修也がキャップ男に目掛けて手刀をくだす。

 その様子をみて、


 「彼の身体能力は然程高くはない。

あの場所は山一つ離れた場所で思いつきで来れる場所ではない。と言う事は何か手を打ってた事になる。いきなり巻き込まれた高校生がこのような動きが出来ると思っているのか?そして、何よりバイクの後ろにのってる女が何よりの証拠だ。彼女は修也を嵌めた一人。一晩でこんなに変わるのか?」


 カメラに映る遥の姿は修也の背中に抱きつき、腰辺りをうねうねさせている。

 

 「確かに彼の身体能力は今までのと比べるまでもなく高い。だが、不可能ではない。誰だって追い詰められたら想定してる以上の力は出る。しかも、女もきっと脅されているはずだ?そう、思うよな?楓」





 「いえ、違うわ......いや、そうよ.................ふふっ...彼は...」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 「相手の組織が大きければ大きい程、俺についての情報そして今までの動きに対しての違和感には気付くはずだ。」

 

 

 

 俺はにやりと笑う。

 この緊張感とスリルが楽しくて仕方ない。

 


 「それより、電話でいつ死ぬ?みたいな物騒な言葉が聞こえたんだけど一体、次は何をするつもり........なの?」



 びくびく震える遥かを見て修也はふっと笑い

 


 「心配すんな。物理的にはしない。いくらなんでもリスクが高すぎるからな。だから、死の次に恐れる物を選択しただけだ。」


 「え……それって」



修也はゆっくりと息を吸ってから、

 

 「恥だ。」


 「え?どういう事?」


 遥は、首を傾げる。

 



 「人は何だかんだ他人の視線や動向を気にする生き物だ。特にこの国はそういう事に対して敏感だ。独りでいる事を怖がり群れの中にいる事で安心を感じている。実際に社会的死と言う言葉が存在するだろ?まーなんだ簡単にまとめると今の俺がその状態だ。だから、奴らにも俺と同じ状況を味わってもらう。」


 「でも、あなた全然元気じゃない!」



 「俺は、そうだな。今生きていて一番生きがいを感じて楽しいのかもな。上手く言えないんだけど何だろうな?」



 

 空を見上げながら、修也は話す。

すると、先程までびくびくしていた遥が急に口角をあげていた。

 修也には聞こえない小さい声で


 「やっぱり私の見込みに間違いはないわね......」



「なんか、言ったか?」


 「いや......べ...別に」


 「そうか......さてここから相手はどう出るのか」


 'まぁ、おおかた知ってはいるが'


 数分の沈黙が流れる。

 人通りは少ないとはいえ周りが静か過ぎて逆に不気味に感じる。

 

 

 





 'こいつ《遥》を使えるとこまで利用しないとな'

 


 

 相手がどれくらいの規模なのかは分からないが、警察やこいつらの連中遥達 を巻き込む程だ。

 そこらにいる連中とは格が違うだろう。

 だが、先程の倉庫でのあの遥かの護衛についていた奴らの意見は割れていた。

 完全には、操られてはいない状態だ。


 つまり、見えない敵は沢山いるが、そいつらも脅されている可能性が高い。

 

 一枚岩ではない以上、恐らく相手も綿密に練られた計画ではないないだろう。






 

 これから、先の行動は一つ一つのミスが命取りになる。だが、わざわざ身構える必要はない。







 何も怖くないのだから、、、、、。



 それから先、お互いに疲れたのかそこから言葉を交わす事はなかった。

 

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