中編 ヘビーカウンタークロスオーバー

「いやまじだって!だってさ、同じ推しで嬉しいってもう惚れてるやないか!」

 俺は興奮しながら悪の炎さんに言った。



「いやあ・・、マドロメちゃん一号さん落ち着いて。まだ会って一時間くらいしかたってないし。それにたんぽぽ仮面さんと付き合ってるって噂もあるよ」



「いやいやいや。少し親しいからってそんな噂立てちゃって。浅はかだね悪の炎を抱いて眠れさんも」



「嬉しいって言われて惚れてると思い込むアナタにだけは言われたくないな・・」



「とにかくアシスト頼みますよ!」



「・・まあ、適当にやりますよ」

 投げやりな悪の炎さんと一緒に個室に戻ると、イケメンたんぽぽ仮面さんの手に触れている猫の尻尾ふりふりさんを見てしまった俺は、その場で膝をがくんとついた。



 手をパッと離す二人を見て俺は言った。

「お前ら付き合ってるやん!」



「いやあ、言いそびれてたんだ。ごめんな」



「謝るなら別れろ!」



「めちゃくちゃだよマドロメちゃん一号さん。一旦落ち着こう」

 悪の炎さんに肩を預けながら席に戻ると、少し沈黙が続く。



「沈黙が続くの耐えられないから言うね。リア充は地獄に落ちろ」

 俺はぼそっと言うとまた沈黙が続いたが、さすがに自分が悪いと思い謝り、また楽しく会話が始まった。



「おー、このからあげうまいっすね」

 お腹が膨れてくると機嫌がよくなっているのに気づき、つくづく俺って単純だなと実感してしまった。



「美味しいでしょ?それもあってこの居酒屋にオフ会選んだんだ」

「センスあるっすよリーダー」

「ありがとう。そういえば、こういう集まりで芸を披露する人っているよね」

「あーいますねー。トランプマジックとかその辺にある箸とか使って器用にやる人。すごいっすよねー」

「すごいよね。そういえばさ、何かギルドチャットで見かけたことあったと思うんだけど。マドロメちゃん一号さんも手から火を出せるって聞いたんだけど本当?」

「えー出せますねー。簡単すよあんなもん。出しましょうか?っと出せるかい!30歳になって条件そろった俺に魔法使いになったとでも?ひどいよたんぽぽ仮面さん!そのたんぽぽ燃やしますよ」



「ごめんごめん。いやあ、聞いたはずなんだけどなあ。おかしいなあ」

 たんぽぽ仮面さんはおかしいなあとわざとらしく首を傾げながら言った。

「私も聞いたことあるんだけど気のせいだったかしらー」

 頭に手をやってわざとらしく言っている猫の尻尾ふりふりさん。

「確かに、そんな噂も聞いたことありますね」

 真剣な顔で言う悪の炎さん。



「ちょっとトイレに行ってきます」

 俺は立ち上がり言った。



「ごめん怒っちゃった?」

 たんぽぽ仮面さんが謝ってくる。



「いえ、本当にトイレです」

 言うと俺はトイレに行って個室に閉じこもった。



「なんでばれてんだ・・」

 俺は独り言を言いながら何もない手の平から炎を創り上げていた。

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