第6話 10階層ボスとの戦闘の末に

「……慣れてきた。」


戦闘時間にして更に30分程が経過し、ナイフの刃もぼろぼろになった。


 ナイフの切れ味とは反比例する動きのキレ。

少しずつ相手の動きからどういう風に動いているか理解し、更に最適化し、真似て行く。


 その過程で、武者番人から心技体の全てを学んだ。もはや、避ける事は造作もない。


 隔絶した差がある敵との戦闘は、濃密で果てしなく大きい経験値を生んでいく。


 その経験値は、不動のステータスを軒並み加速度的に上げていく。


 まだまだ武者番人とは差が有るが、徐々に差は縮まっていく。


 恐らく、自身を鑑定すると存在格もレベルもかなり上がっている事だろう。


 文字通り桁が違い、極度の集中でアナウンスは聞こえなかったが、何かしらのスキルも恐らくは取得している。

 

 戦闘も更に1時間が経過した。

武者番人は耐えかねたのか、それとも遊びに飽きたのか、刀に魔力を込め始めた。


 いよいよ、本気を出してきた。


 武者番人は己の魔力を刀身に込める。


 刀身が赤黒く凶々しい光を放つ。

 

 下から切り上げる様に斬撃を放つと、斬撃は不動へと飛んで襲いかかる。


「飛ぶ斬撃とかありかよ!!!」


 紙一重で横に避ける。


すると武者番人は横薙ぎで斬撃を放つ。


「はぁーーーー!?今度は横かよ!!」


 ジャンプで回避するも、見計らったように更に狙い撃ちの斬撃を放ってきた。


「ぐくくっ。舐めんじゃねぇ!!」


 一度でも見たら充分。

その圧倒的な才能は、斬撃の弱点を捉えた。

 

 「いくら力が有ったって、弱い箇所をつけば脆く崩れるだろう。」


 己もナイフに魔力を纏い、斬撃の弱点を攻める。

 ヂヂヂと超高音が鳴り響き、魔力と魔力が衝突する。


 武者番人の斬撃は霧散し、消えた。


「くはは。常に魔力を感じる訓練をしといて良かったぜぇ。お陰でスムーズに纏えた。……おいこら。これだけか?」


 更に放たれる斬撃を同じ要領で消していく。

戦闘も更に30分が経過した。


獲得する経験値も少なくなって来た。

 

「もう慣れたし、経験値も少なくなって来たからそろそろ片付けるぞてめえ。」


 ナタに持ち替えて、魔力を纏う。


見る見る刀身は闇の様に黒く染まり、まるで全てを飲み込み


 全てをこの世から消してしまう修羅の力を想起させる。


 この時点で戦闘における記憶が少しだけ蘇っていた。例えば剣技や魔技と呼ばれる武技など。


 そして、前世の武技の一つを放つ。


鬼剣きけん黒叉火羅くろさから



 漆黒の斬撃は地獄武者番人ケルベロスを消し飛ばした。


 周りの空間は歪んで、直ぐに正常へと戻った。


 ナタは衝撃のあまり粉々になって消え去った。


『レベルアップしました。現在のレベルは51です。』


「最初はどうなるかと思ったけど、何とかなるもんだな。イレギュラーもイレギュラー。もうこんな不運はコリゴリだわ。………それと最後の技。なかなかだな。」


 地獄武者番人を倒した瞬間、莫大な経験値を得た。


 戦闘中に得ていたモノより純度が濃く質の高いモノを得た感覚がした。


 そばには、番人が使用していた刀が落ちていた。


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冥刀めいとう月花暁月げっかあかつき

 クラス:幻想級

・冥府の番人がその昔に幾千幾万もの命を奪った刀。その斬れ味は、この世の者のみならず冥界の者すら斬り伏せるだろう。


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次に自身のステータスを鑑定する。


「流石にレベルは爆上がりしたな。」


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阿空不動あそらふどう】[20]

種族:人間

存在格:B[51]

状態:健康

HP:1255/2300 MP:563/1500

物攻:1030

防御:850

魔攻:750

魔防:650

敏捷:1035

幸運:60


【ユニークスキル】

闘魂回帰トウシンノキオク』[12%]

鬼才天選テンニエラバレタモノ

天眼テンガン

刀剣神覚トウケンノサトリ


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 レベルもかなり上がり、存在格もEからBへと大躍進。

 新しい力に胸が高鳴り、期待と興味を込めて

ステータスを鑑定した。







 

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