第22話 赤い狂星(10)

 そんなに身近に神がいていいのだろうか。


 静羅も神。


 和哉も神。


 そんな偶然あるんだろうか。


 疑問を抱きながら日の照っている空を見る。


 それから、


「あ。3時だ」


 ふと時計を見て静羅は焦った。


 帰る時間を計算に入れるとそろそろ戻らないとヤバイ。


 彼らの言っていることは気になるが、ここは帰るべきだろう。


「俺そろそろ帰るわ。帰らないと和哉がうるさいから」


 渡されていた手鏡を返して静羅が突然そう言った。


 言ったが早いかもう背を向けている。


「兄者っ!? ちょっと待ってくれっ!!」


「俺は翔南高校というところの男子寮に住んでる。用があったらそっちから来いよ。但し人に気付かれないようにしろよ。天界がどうのとか神さまがどうのとか、そんな頭狂ってんじゃないかって話を人に聞かれるつもりはねえんだ」


「翔南高校の男子寮?」


「まあその外見じゃあ同じ学年にはなれないだろうけどな。なれるとしたら志岐って言ったっけ? そいつぐらいだとは思うけど。じゃあな。縁があったらまた逢おうぜ」


 それだけ言って静羅はヒラヒラと手を振って歩いていってしまった。


「兄者」


「あれはまだ信じてくださっていませんわね。王子は」


「まあ無理もない。こんな非常識な話を普通の人間の認識しかない王子に信じてもらおうという方がどうかしているんだから。それより居場所を教えてもらっただけ有り難いと思わないと。これで色々と手を打てるし」


「それより紫瑠さま」


「どうした、柘那?」


「先程王子は奇妙なことに興味を持たれていませんでした?」


「奇妙なこと?」


「生命を狙われることがあるのかと」


「ああ。そういえば……」


 そこから変な流れの会話になったので、うっかり流れかけていた。


「もしかして王子はだれかにお生命を狙われているのではないでしょうか」


「……え?」


 志岐が絶句して紫瑠は険しい顔になった。


「柘那の予感か?」


「はい。なんとなくですが。そう感じます」


「それはまずいな。早く兄者に近付く術を探さないと。翔南高校、か」


 阿修羅の王子だとはっきりした静羅。


 その静羅の封印を解いた和哉は一体何者なのか。


 しかも天族の要とも言える東天王と南天王が従っている。


 そこへ介入した夜叉の王子に阿修羅族からの迎えの3人組。


 これから運命は思いがけない方向へ動こうとしていた。

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