02.悪魔のいけにえ
さて、何はともあれ情報整理である。
俺――いや、
年齢は大体一歳。たまにニッチャリとした良くない笑い方をする、何処にでも居る女児である。
当然ながら、男だった前世とは名前も性別も違うし、両親も全く知らない人だった。
先日、一人歩きが出来るようになったので、ヨタヨタと歩いてリビングに放置されている新聞やらテレビやらで情報収集を行った結果、どうやら私は前世と"よく似た"パラレルワールドの現代日本に転生したようだった。
というのも、コロナウイルスの流行や、某国の軍事侵攻など、時期的に発生していないとおかしいイベントが悉くスルーされているのだ。
他にも細かい違いがあるかもしれないが、パッと見は殆ど前世と同じ現代日本のように見えるし、まあ大した問題ではないだろう。
歴史等の差異については、義務教育が始まってから確認すれば良いか。私は深く考えることを止めた。
新聞を広げて眺めている私を、微笑みながら見守っている母の視線を背中に感じながら、私は今後の人生設計について思案する。
何はともあれ、私は寝取られ女になりたい。
男であった前世では決して叶えることが出来なかった夢を、今生こそこの手に掴むのだ。
だが、NTRと一口に言っても、そのシチュエーションは様々である。
和姦か強姦か。寝取る男はイケメンか汚いおっさんか。寝取られるヒロインは清純系かビッチ系か。
他にも要素を挙げていけばキリがないが、私はその数多存在するNTRシチュの中から、自らが出演するNTRシチュを一つだけ選ばなければいけない。実に悩ましい。
転生ボーナスで死に戻り能力でも貰っていれば、NTRシーンを堪能した後に腹でも切ってループすれば良いのだが、生憎と神様面談をした覚えもないので、チート能力は持っていないと考えた方が良いだろう。
閑話休題。
私は母が差し出した哺乳瓶の乳首に吸い付きながら、目指すべき
さて、ここまで長々と語ってしまったが、実は大まかなルートを私は既に決めていた。
折角、赤ん坊に転生したのだ。ならばNTRの王道にして大正義"幼なじみNTR"を目指すしかないだろう。
男女が幼い時分から時間と愛情をかけて築き上げたものが、間男の手でグチャグチャに崩壊させられるのだ。
これはもうセックス以上の快楽だッ。
故に寝取られ男として、幼なじみの確保は急務である。
ワインと一緒で、時間をかければかけただけ芳醇に熟成するのがNTRだ。出来れば幼稚園に居る内に逸材を見つけて確保しておきたい。
寝取り役に関しては、最悪適当な人間を後付でも構わないが、寝取られ男だけは絶対に妥協出来ない。ここを適当な人間で済ませてしまう奴は、一生社会的に成功出来ないと私は考えている。
脳内で自説を力説していたら、思わず哺乳瓶の乳首を吸う口にも力が入ってしまう。
何にせよ、私がNTRルートに向けて動き出せるのは、もう少し先の話だろう。今はベイビィとして健やかに育つことに専念せねば。
お腹が膨れておねむになった私は、NTRシチュを妄想しながらお昼寝するのであった。スヤァ。
***
そんなこんなで時は流れ、すくすくと成長した私は、ご近所の"ダリア幼稚園"に入園することになった。
ちなみにダリアの花言葉は"移り気"・"裏切り"である。
実に縁起の良い名前の幼稚園に入園出来て、私も喜びにニッチャリ笑顔を浮かべる。
さあ、ここからが本番だ。
ようやく、ある程度の自由行動が取れる年齢になったのだ。もう頭の中だけでNTRシチュを妄想して耐え忍ぶ時間は終わりである。
ここからはその妄想を実現する為に、自ら動くことが出来るのだ。一刻も早く、私と栄光のNTRロードを歩む寝取られ男を探しださねば。
だが、焦りは禁物である。
"幼稚園時代からの幼なじみ"という強NTR属性を、適当な男で済ませてしまうのは、あまりにも勿体ない。
まずはじっくりねっとり人材の選別をする必要があるだろう。ここは焦らずに"見"の姿勢である。
そして、寝取られ男の選別と並行して、私自身の魅力アップも急務である。
最高のNTRには『こんな素敵な相手を奪われたくない』『何としてもあの女を寝取りたい』と思わせるような、寝取られ女の魅力が重要だと私は考えている。
故に私自身も完璧な美少女を目指して切磋琢磨するのは必然である。
とは言っても、流石に幼稚園時代から美容だのお洒落だのには、経済的な面からも手が出せない。ひとまずは人間的な魅力を磨くことから始めることにしよう。
私は前世の間男生活で培ったコミュニケーション能力を駆使して、みんなの人気者になることから始めることにしたのだった。
***
そんな園児生活を始めて数ヶ月後、私は一人の男児に狙いを定めた。
彼の名前は"
少々引っ込み思案で内気なきらいがあるが、花や動物を愛し、困っている人がいれば手を差し伸べられる美しい心を持った優しい男の子だ。
まるで女を寝取られる為に生まれてきたような逸材に、私は生唾を飲み込む。
住所も私の家から歩いて数分程度のご近所さんというのはリサーチ済である。
出来ればお隣さんというのが理想的だったが、流石にそこまで都合良くはいかなかった。まあその辺りは妥協しよう。
私が寝取られ男に求めるのは"心の美しさ"一点のみである。
容姿は別にどうでもいいし、なんなら少し冴えない見た目の方が色々と都合が良いぐらいだ。自身に劣等感を抱いている相手の方が、寝取られ女に依存させやすいし、そんな依存対象である女が寝取られた時には、さぞ良い脳破壊音を聞かせてくれることだろう。
まあ、この年齢の子供の容姿なんて、将来的にいくらでも変わってくるだろうけどね。
そんな事を考えながら、私は他の園児たちから離れて独りで遊んでいるユウキくんに声をかけた。
「ねえ、ユウキくん。私も一緒に遊んでいいかな?」
「――えっ?」
私は自らの邪悪な内面を完全に覆い隠すと、花が咲くような微笑みを男の子へと向けるのだった。
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