クビになったVtuberオタ、ライバル事務所の姉の家政夫に転職し気付けばざまぁ完了~人気爆上がりVtuber達に言い寄られてますがそういうのいいので元気にてぇてぇ配信してください~

だぶんぐる

クビになったVtuberオタ、ライバル事務所の姉の家政夫に転職し気付けばざまぁ完了~人気爆上がりVtuber達に言い寄られてますがそういうのいいので元気にてぇてぇ配信してください~

1てぇてぇ『なんだってぇ? 憧れのVtuber事務所を追放されたってぇ?』

【一日目・ルイジ視点】



「天堂、お前クビ」

「は?」


〈いきなりクビw〉

〈ちょっと待てwww〉

〈草草草〉


 そんなコメントが疲れ果てた俺の脳内に流れていく。

 だが、脳内は大盛り上がりでも、事務所の中が凪状態。誰もが無言だ。

 俺も流石に社長の前では余計な事は言えない。だけど、


「え、と……理由をお伺いしても……?」

「お前、ウチの所属タレント、家に連れ込んでいるだろう」


〈はい、炎上案件~〉

〈は?〉

〈氏ね〉


 ヤバい、別の意味で盛り上がり始めた。オワタ。

 だけど、何故……俺の家に来たことは絶対に言わない約束だったのに……。


「これさ、ウチのピカタだよな?」


 社長がスマホの画像を見せてくる。

 帽子と眼鏡で変装しているが隠しきれないオーラというかそういうのが溢れているし、変装なしの俺と並んだら背格好でウチの社員なら気付くだろう小柄な美少女が写っている、俺と。

 引田ピカタ。このVtuber事務所の稼ぎ頭。登録者数は今の業界ではそれなりだが急上昇っぷりが半端ない、今大注目のVtuberだ。

 その中の子は勿論、知っているし、みんないつも話に出るくらいの美少女だ。

 間違うはずがない。


「そう、ですね」

「認めたな」


 認めるしかない。もうこれは誤魔化しきれない。けれど、どうして……?

 ……ああ、そういえばさっき、小村れもねーどおもれ れもねーどが『ご愁傷様~』って匂わせてたな……アイツか……。




 小村れもねーどは、事務所でも下から数えた方が早い方だった。

 だが、彼女に才能を感じていた俺は、一生懸命れもねーどに尽くし続けた。


『ありがと、るい君! わたし、絶対がんばるから!』


 そんな言葉もあの頃はよくかけてくれ、俺も彼女の為に頑張ろうと努力し続けた。

 そして、彼女の努力は花開き、注目を浴び始め、いつの間にか上から数える方が早いくらいになっていた。

 だが、それからの彼女は変わってしまった。


『るい、あたしの言う事聞けないの? ほんと使えない。クビにしてもらうよ?』


 それが彼女の口癖。俺はクビだけはと必死に耐えていたが、それも限界が来て、れもねーどのマネージャーを二人体制にしてもらい、俺はサポートに回った。

 だが、そのしつこさが気にくわなかったのか、れもねーどが裏で手を回し副社長に取り入って俺を虐め始めた。


 結果、俺は、複数の新人Vtuberのサポートに回された。担当ではなく、ただの雑用。

 しかも、れもねーどのサポートもしなければならずその時にはほぼ奴隷扱いだった。


 ただ、それでも、俺は事務所を辞めたくない一心で頑張った。


 そして、みんなからも認められ始め、事務所も上り調子になり始めた矢先、これだ。

 だが、確かにウチのルールには反している。


「申し訳ありませんでした」


 俺は素直に頭を下げる。認めるしかない。


「お前がウチのタレントに手を出すなんてな」

「んなことしてるわけないだろうがぁああああ!」


 キレた。

 社長は見事に俺の地雷を踏みぬいた。

 疲れとストレスのピークもあったのだろう。


 やってしまった。謝罪だ! 謝罪しかない!


「す、すみません!」

「す、す、すみませんじゃねえよ! しゃ、社長に向かってなんだその口の利き方は!? 大体、部屋に連れ込んで、何もしねえなんてわけねえだろ!」

「いえ、誓って。手は出していません!」

「嘘つけ! テメエのVtuber狂いは知ってるんだよ!」


 それは認める。

 俺はVtuber界隈では有名なオタクだ。好きで仕事にしようと思ったタイプだ。


 だけど、


「Vtuberを愛しているからこそ手なんて出さないんだろうがぁあああ!」


 キレた。

 もう疲れていたんです。

 あと、別にガチ恋勢を否定するつもりはないがみんながみんなそうだと思ってほしくない。


「じゃあ、何やってたんだよぉおおおお!?」

「ご飯作ったりとか、お風呂入れたりとか、マッサージとかですよぉおおおお!」

「ほぼヤッてんだろうがぁあああああ!」

「ヤッてねえっつってんだろお! 頭ん中ピンクか! ぼけぇええええええ!」


 そして……クビになった。


 まあ、冷静に考えれば異常だ。あの生活。うん。


 クビになっても仕方ない。

 しかも、即クビ。

 これ以上、タレントに悪影響が出ないようにすぐ出ていけとのこと。


 荷物をまとめ、会社を後にする。

 ご丁寧にも、れもねーどが入り口で嗤って待ち構えていた。


「ぷーくすくす」

「ぷーくすくすを正確に言う奴初めて見たわ」

「ざまぁwww」

「よかったな、追い出せて」

「泣いてあたしに忠誠誓うなら、社長に取り消してもらうけど?」

「いや……やっぱり俺はVtuber関係の仕事に就かない方がよかったんだ。目が覚めた」

「え?」

「ありがとな。お前はどう思ってたか知らないけど、俺はお前の事、本当に頑張り屋で凄い奴だと思ってる。ただ、何回も言ったと思うけど、どんなにストレス溜まっても周りの人にぶつけるな。頼れ。周りを信じろ。じゃあな」

「え? ねえ、ちょっと?」

「画面の向こうで応援してるよ」

「ねえ! ちょっと! 待ってって! ねえ!」


 そして、俺はVtuber事務所【フロンタニクス】を追放された。

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