十二月十六日(金曜)みけ

 ニンゲンがなかなか来ないから、こくに兄ちゃんがガラス戸をかりかりってやった。そうしたら、やっと来て「あ! 来てたの~」と言うの。あたしたちの朝は早いんだよ。もう、ずっと待ってたんだから!

 三匹でしっぽをぴんと立てながら、ガラス戸のすぐそばでじっとニンゲンを見る。

「ほら、牛乳だよ~」と紙パックを見せてくれるので、わくわくする。

 命の水だ!

 あたしたちはこの命の水が欲しくて、この家に来ている。なかなか命の水をもらえるところ、少ないんだよね。

「今日は三匹いっしょなんだね」と言いながら、ニンゲンは二皿にかりかり、二皿に命の水を入れる。

 でも、まず食べるのはこくに兄ちゃんに決まっている。

 あたしはこくに兄ちゃんが食べるのをじっと見ていた。

そうしたら、ニンゲンが「今日はお皿、多いよ」と言うので、そーっとこくに兄ちゃんの横に並んで命の水を飲んでみたの。こくに兄ちゃん、怒らない! やった!

あたしは命の水をぺろぺろと飲む。ああ、おいしい! 生き返るみたい! ああ、一皿じゃ足りないわ、もう一皿も舐めちゃおう。

 そうしてあたしとこくに兄ちゃんががつがつしている後ろで、こくいちはそっと待っていた。大丈夫よ、こくいち。ニンゲンはちゃんとお代わりをくれるから。

 ところが、あたしとこくに兄ちゃんがひと段落したところで、お父さんのくろが現れた。お父さんはもうだいぶ年をとっていて、どっしりとしていて貫禄がある。くろ父さんが来ると、みんなお父さんが食べるためにさっとその場をどいた。でも、おはようのあいさつはする。みんなでお父さんと顔をこすり合わせるのよ。くろ父さん、なんとなく、久しぶり! ふふ。

 そうしてくろ父さんが残りをがつがつ食べ始めたので、あたしたち兄弟はとりあえず遊びに行くことにしたの。こくいち、また戻ってくればいいよ!

 くろ父さんは、最近はじっと眠っていることが増えた。いっしょに遊びに行かなくなってしまった。たぶん、今日はあのウッドデッキのソファでしばらく眠ったり、気が向いたらかりかりを食べたり命の水を飲んだりするんだろう。

 あたしは緑の中を駆け抜けて、冬の枯れ葉でさくさくと遊び、みんなとはぐれてしまった。そうして、またなんかのどが渇いちゃったので、また命の水をもらおうと、ウッドデッキにやって来た。

「あ、みけ、また来たの?」

 ニンゲンが嬉しそうに言う。最初はニンゲンが怖くて、あたしはなかなかガラス戸の近くまで来られなかった。少し離れたブロック塀で、ニンゲンがいなくなるのを待ってから食べていた。でも、最近は怖くなくなったから、ひとりでも近くまで行けるようになったんだよ。

 命の水をごくごく飲む。

 こくいち、どこ行ったのかなあ。今ならひとり占め出来るよ。

 あたしはあたりを見回して、にゃーんとこくいちを呼んだ。

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