第5話
「我々セェーン族は、はるか昔に六匹の
レイウェンは立ち上がり、少し距離を取ってエドワードの方へ腕を伸ばした。
「
その途端、彼の手から水が矢のように次々と放たれる。同時に、エドワードの手から炎に包まれた龍の姿が一瞬だけ見えたかと思えば、レイウェンの放った水の矢が一気に蒸発した。
村長は口を開けたまま、唖然としている。
そのままレイウェンたちは何事もなかったかのように話を続けた。
「ご覧の通り、私は水を自由に扱える力を授かりました。そして、エドワードは
「い、いやぁ、素晴らしい! お噂は聞いていましたが、まさかそのお力を生きているうちにお目にかかれるとは思ってもみませんでした……!」
「この力は見世物ではなく、戦うためのものだからここで見たことはご内密に」
エドワードが人差し指を口に当て、片目を瞑る。村長は何度も首を縦に振った。
「お力については、よく分かりました。ちなみに、その傷を癒す力を持つルーナ国の生き残りの方は、どのような神龍の力を受け継がれているのですか?」
「ルーナ国は、
「本来は一つの力のみ受け継がれるけれど、百年に一度、治癒の力も持つ子がルーナ国では生まれるんだ。つまり、彼女は選ばれし者ってこと」
「選ばれし者……」
言葉を噛み締めるように、村長は小さく呟く。
まだ、探し人の居場所を教えてもらえそうにはなく、あともう一歩というところだろう。案外、口が堅い。
レイウェンはエドワードに目配せし、最後の切り札としていた話題を振ってみることにした。
「村長は、ドゥンケル族をご存じですか?」
「え、ええ」
「セェーン族の力の源は光で、その光と対になる闇の力を持つのがドゥンケル族。彼らがここ最近、活発に動き始めていて、我々の中でも問題になっています」
「ドゥンケル族が活発になることで、どんな問題があるのですか?」
汗を拭いながら、村長が首を傾げる。レイウェンは少し話すのを躊躇った。
今から話すことは、人々にはまだ知られていない内容だった。
しかし、居場所を教えてもらうためには、背に腹は代えられない。意を決して、レイウェンは話を続ける。
「今からお話することは、誰にも漏らさないでください。あなたの口の堅さを信用して、お話しますので」
「は、はい」
ごくりと村長は唾を飲み込み、目をそらさずに頷いた。
「人は誰しもが陰と陽の心を持っています。ドゥンケル族はその陰の心、いわゆる人間の闇の部分に入り込み、じわじわと心を蝕んでいく種族です。そんな彼らが活動を始めたら、どうなると思いますか?」
「そ、それは……。心や体が病んでいく人々が増え、彼らの支配できる領域が広がっていく……?」
「そうです。光の国、つまり我々の住んでいる国がどんどん侵略されていってしまうのです」
「でもどうして、最近になって活発に動き始めたのでしょう?」
「実は、ドゥンケル族もルーナ国の生き残りがいたというのを嗅ぎつけたからではないかと考えています」
「なんと……」
「これも世に知られていない話ですが、十三年前の事件はドゥンケル族の手により、引き起こされた事件だったのです」
「……!」
村長の目が大きく見開かれ、絶句する。
表向きは、火事として処理されていたから当然の反応だった。
「だから、ドゥンケル族の暴走を止めようと僕たちは動きだしているところなんだ。でも、その暴走を防ぐにはルーナ国の力が欠かせない。僕たちセェーン族は、神龍の力を持つ六人が揃わなければ、無敵の力が発揮できないからね」
エドワードの言葉に村長は黙り込み、部屋の中が静寂に包まれる。
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