第2話 冷えてしまった

嫌な予感は大体当たる。


彼はきっと、いや、絶対に、ただ悩みごとを抱えているだけだ、ただ不満で言いたいことがあっただけだ、そうに違いない。

私は自分にそう言い聞かせて、電車の中からやけに明るい夕日を眺めながら帰った。


だけど、家に帰っても、彼が別れた後に"いつも"当たり前にくれるメッセージは来なかった。


「今日はありがとう、幸せだった。」

彼がいつも当たり前に伝えてくれる言葉。

私がいつも彼から当たり前に受け取っていた言葉。


初めてだった。

こんなにもこの言葉が彼から送られてくることを自ら願うように待った日は。


何か悪いことしちゃったかな…

私の心はこの想いで埋め尽くされていた。


悪い予感は大体当たる。


その日の夜、私は彼から別れを告げられた。


人は愚かにも、当たり前に過ごしている"いつも"が、"いつも"でなくなった瞬間から、"いつも"を失ってから、その大切さに気づく。


私は愚かだった。

私は彼との"いつも"を失った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る