親友はこっくりさん
持木康久
プロローグ (7月12日 雨)
夕焼けの真っ赤な光が教室に大きな影を落とす。
つい先ほどまで降っていたはずの雨はいつのまにか上がり、窓に光る雨粒だけがこの朱く美しい世界が以前からこの世に存在していたことを証明しているようである。
先ほどまで子供たちの笑い声が聞こえていたはずの廊下も、今は別世界かのように朱と静寂に包まれている。
少年は誰もいない教室へ視線を戻す。
静寂の中、教室に鳴り響く時計の秒針の音だけが時の流れを感じさせる。
少年は机の上に置かれた古い紙と硬貨へ視線を落とした。
彼はそれをしばらくぼんやりと見つめると、汚れた硬貨を紙に描かれた朱色の鳥居の上へ滑らせ何かをつぶやく。
硬貨は夕焼けに朱く染められた紙の上をゆっくりと動き、そして、止まる。
少年は小さく息を吸い、消え入りそうな小さな声でつぶやく。
「こっくりさん、こっくりさん、僕にもみんなみたいに友達はできますか」
夕焼けに染められた雨粒が一つ、静かに落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます