第5話 準備

 アンナちゃんに街の案内を頼み二人で街を歩いている。


 まずは洋服屋へ。

 着替えの普段着は新品だとオーダーメイドで高く、時間もかかるので中古を買った。

 中古でも染み抜きされ着なくなったら売り、汚れを取り、擦り切れたら生地を縫い合わせ、作り直してリサイクルをしているそうだ。

 さすがに下着は新品で、過去に転移者が広めたトランクスを購入した。

 俺は買い物の際は迷わないので、アンナちゃんをそれほど待たせなかったと思う。

(さっさと買って、後で後悔するタイプです。同じ色の物ばかり買ったりとか)


 大聖堂の鐘が鳴り、時刻はまだ12時。

 アンナちゃんに色々、聞いてみた。(ま、10歳で分かる範囲だけど)


 1日2食が主流で、昼はお腹は空くので屋台などで間食程度に食べるらしい。

 生活魔法が使えない人も多く、火を起こす場合は火打石で時間をかけて点ける。

 それが中々面倒なので自炊している家庭よりも、外食がほとんどだそうだ。


 俺が出来ることは冒険者くらいしかなれない。

 それに転移者の割には、ステータスがショボイ。

 ケチだったのか、あの女神は?


 それにこれから必要になるのは剣と防具だな。

 アンナちゃんに武器屋と防具屋の場所を聞いた。

 それから一旦、宿に戻りアンナちゃんを送ってからまた外に出た。


 まずは武器屋からだ。

 武器のマークの看板が下がっている店のドアを開けた。

 カンッ、カンッ、カンッ!

 製鉄を叩く音がする。


「すみません、誰かいますか?」

 声を出したが、音で聞こえないらしい。

 しばらく待っていると奥から人が出てきた。

 背は小さく髭もじゃで腕は太い。

 山小人ドワーフか?

 まじまじと見ていると

「なんじゃい、ドワーフは初めて見るのかい」

「はい、そうです。田舎から出てきたもので」

「そうかい。で、今日は何がほしいんだ?」

「剣が欲しいのですが」

「今まで使ったことは?」

「ありません」

「なら、そこにある剣を振ってみろ」

 剣が何本か置いてあり、試しに振れるようになっているようだ。


 シュッ!シュッ!シュッ!


「ほう、力はあるようだな。ならこれだ」

 そう言って渡されたのがロングソードだ。

「ま、初心者はそこからだな。5万円で鞘も付けてやるから」

 俺は5万を渡し剣をもらい店を出た。




 今度は防具屋だ。

 ドアを開け中に入ると鉄や皮の臭いがした。

 

「こんちにわ。誰かいませんか?」

 奥で物音がし中から小柄で髭もじゃの男が出てきた。

 またドワーフか?


「誰がドワーフじゃい!俺は人族だ。おう、いらっしゃい。防具かい?防具ならいいものを作るぜ!」


「まだ何も言ってませんが」


「そう顔に書いてあるぞ。防具かい?防具ならいいものを作るぜ!」


「えぇ、軽くて丈夫で動きやすい防具がいいのですが」

「予算はどれくらいだい?」


「そうですね。普通の冒険者ならいくら掛けるのでしょうか?」


「なんだ、初心者かい。なら皮の鎧、体力があるならその下に鎖帷子くさりかたびらを着るのもいいな。それ以外は素材や魔法付与するかによって大きく変わるから。上を見たら切りがないさ」


「ではそれでお願いします。肘・膝・肩当ても付けてください」


「はいよ。丁度、出来合いのがあるからサイズを直すよ。着て見てくれるかい?」

 それからサイズを直し60分ほどで終わった。


「少しオマケして10万丁度でいいや!また来てくれよ」

 俺はお金を払い防具屋を後にした。

 一度外に出て必要があれば、もっと良い防具にすればいい。




 次はポーションを扱う薬師ギルドか。

 怪我をした場合、回復手段がないからな。

 薬師ギルドは商業ギルドの近くにあった。


 ドアを開け中に入ると薬品の臭いと、窓を閉め切っており薄暗い。


「いらっしゃ~い」

 70歳くらいの老婆がいた。


「なにが欲しいんだい?」

「初めてきたので中を見せてもらってもいいですか?」

「初めてかい。なら仕方ないね。日が当たると薬が劣化するから、薄暗いのは勘弁しておくれ」


 俺は近くにあった瓶を手に取った。


【スキル・鑑定】発動

 名前:ポーション1級

 効果:わずかに傷、体力を回復する


 そして他の瓶も見ていく

【スキル・鑑定】発動

 名前:ハイポーション3級

 効果:傷、体力を回復する


【スキル・鑑定】発動

 名前:マジックポーション1級

 効果:わずかに魔力を回復する


 

ポーションとハイポーションを指さし

「値段の違いはなんでしようか?」

「効果の高さによって違うのさ。効果が高いほど値段も上がる、て訳さ」


「ポーションの効き目はどのくらいなんですか?」

「そうだね、刃物で切られて布できつく巻いて、血が止まる範囲の傷なら対応できるかな」


「ハイポーションは?」


「お腹がバックり切られたとして、使うとなんとか傷が塞がるかもね」

「ではハイポーションがないときは、ポーションを何本も飲めば効果が倍増するのでしょうか?」

「2本くらいなら良いが、それ以上は効果は無いね」


「マジックポーションはどうでしょう?」

「魔力が無くなると気を失うからね。そうならないために、マジックポーションを使うのさ」

 どうやらポーションとマジックポーションは『無いよりマシ』ということらしい。

 ハイポーションは1本5,000円。

 マジックポーションは1本10,000円もする。

 俺はハイポーション5本とマジックポーション2本買い、45,000円払いストレージに仕舞った。


「おやま~!マジック・バッグ持ちだなんて!お金持ちの坊ちゃんだったのかい?」

 と、老婆は驚いていたが。


 残金10万円弱。準備だけで所持金の1/3も使ってしまった。

 後は街の外を案内してくる人が必要だな。


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