第23話 焼きそばとフェンリルの子供!?
傭兵達や1番来店してくれたナディアとバキュとお別れを告げて次の街に向かっている。
ナディア達は、これから大きな戦争があり駆り出されるとのことで、生き残ったら食べに行くと約束してくれた。
「トンボそろそろ日が暮れそうだけど今日はこの辺りで野営かな?」
次の街に向う為に、馬車を走らせている。しかし、一向に森を抜け出す気配が無いのだ。
「おう!そうだな。この辺りで野宿にするか。魔道具を出しておいてくれねぇか?」
「はいは〜い!」
なんの魔道具かというと結界を生み出す物だ。ナディアから教えて貰って購入したのだが、敵意ある存在を弾き返す結界とのことである。
「よし!設置完了。おっ!薄い膜みたいなものが張るからわかりやすいな」
起動すると、半円状にテント3つ分くらいの結界が張られる。
「この中で料理をしても大丈夫かな?煙がとか籠らないだろうか?」
「平気じゃないか?悪意のあるものを通さないだけだろ?」
それは外側の話だろ?と思う真人であったが、危険な結界の外で作る気にもなれないので試しに結界内で作ることにした。
「試してみるか。トンボ、ビールを渡しておくな」
「おっ!待ってました。ぷはぁーうめぇ!1日の終わりはこれに限るぜ」
幸せなやつだなと思いながら、真人は料理を作り始める
レシピに関しては、想像しやすいだろうからなしにしよう。とりあえずシンプルに豚バラ肉 (スライス) とキャベツとにんじんともやしを入れてソースで味付けをしたキャンプ風の焼きそばである。
「出来たぞ〜食べよう」
無事に結界は、煙を外に出してくれるようだ。呼吸ができている時点で空気を出し入れしているし、煙を外に出すのは当たり前かと思うのであった。
「お〜うまそうだな。ソースの焼けた香ばしい匂いが堪らん」
ソースで茶色になった麺から湯気を出して鼻腔をこれでもかとくすぐる。
「うめぇ〜!どっちかといえば辛めの味つけだが、何故か甘さもどことなく感じるし、野菜のシャキシャキした感じもいいな。しかし、この細長くてツルツルしたのが食べづらいな」
異世界人にとって麺を食べるのは難しいらしくすすることができないようだ。
「こうやってすすると、よりおいしく食べれるぞ」
真人がズルズルと食べる姿を真似してすすろうするトンボだが、音だけで麺が口に入っていく様子はない。
「難しいな。クソ〜もっとうまくなるって言われたら、この食べ方を習得したくなるな。他にこのような料理はないか?あるなら当分練習の為に出してくれねぇか?」
「いっぱいあるから構わないよ。ちなみにこれを麺て言うんだ。覚えておいてくれ」
それを聞いたトンボは、「麺、麺、麺、麺」と呟くのであった。
ツンツンツン
「ん?なんだ?...うわぁぁぁぁ」
真人は、何かと目が合って驚き、椅子から転げ落ちたのだ。
「どうした?って魔物がなんでいるんだ?」
そう言ってトンボは、抜刀する。
「待って待って!僕は、その麺を食べたいだけなんだ。襲ったりしないよ〜」
「魔物がしゃべった?」
「魔物が話すなんて初めて聞いたぞ」
真人とトンボは、魔物が話していることに驚く。
「僕は、小さいけどフェンリルだよ。魔物と一緒にしてほしくないな。それで、麺を食べせてくれるの?」
見た目は、白くモフモフした小さい犬にしか見えないのである。
「えっと、俺達を食べに来たわけじゃなくて、この焼きそばを食べに来ただけ?」
「何回もそう言ってるの!その焼きそばを食べたいの!早くちょうだい」
2本足で立って万歳をしてちょうだいアピールする。それを見て可愛くなった真人は、「わかった。待ってろよ」と言って焼きそばを作るのであった。
「焼きそばお待たせ!熱いから気を付けて食べるんだぞ」
「ウワァァァァ、おいしそう」
目をキラキラさせながら焼きそばを見るフェンリル。次の瞬間、バクバクと凄い勢いで食べ始める。
「ハフハフハフハフ、ん〜おいしい!こんなの食べたことないよ。人間はみんなこんなおいしい料理を食べてるの?」
口の周りにいっぱいソースをつけながら話すフェンリル。
「いや!マサトが特別だな。他の料理は味気ない物ばかりだぞ。マサト以外の料理を食ったらガッカリするはずだ」
「へぇ〜じゃあ僕もマサトに着いて行ったら今日みたいにおいしい料理をいっぱい食べられるの?」
「えっ?着いてくる気なのか?お父さんやお母さんが反対するんじゃないかな?」
かわいいけど、着いて来られても面倒見きれないぞと思った真人は、両親の話を出して諦めさそうとする。
「う〜ん?どうだろう?ちょっとパパとママに聞いてくるね。マサト、居なくならないでよ...」
ウルウルした瞳で見られた真人は、「わかったよ。朝まではいるから」と言ってしまうのだった。
「トンボ、大変なことになりそうだな...」
「大変なんてもんじゃねぇよ。伝説の魔物フェンリルだぞ。一生に一度会えたら奇跡と言われてるくらいだ。今でも焼きそばを食っていたなんて信じられねぇよ」
「こっちの世界の伝説の存在なんだな。とりあえず約束してしまったし、朝まで待とう」
そう言って寝る準備をするのであった。
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