第18話 体操服を狙い撃ち?

 ──体力測定の時間。俺が透花のセクハラ被害に遭っていたその時。


 俺は視界の端で何かが光ったのを目撃した。それは、レンズか何かに太陽光が反射したような光。

 その光を目にした俺は、昨日見たドラマの、主人公が狙撃手から恋人である歌姫を守るシーンを思い出す。


「危ねえっ!」


 透花を庇うように、咄嗟に光と透花の射線上に入る。

 これは昨日見たドラマと同じ!? 間違いない、狙撃だっ!


「え? え? ティアちゃん!?」


 何事かと声を上げる透花を樹の陰に強引に座らせ、俺は状況確認のために周囲を伺う。

 今の光は部室棟の方からだった。

 距離にして約二百メートル。光源と思われる付近に現在人影はなし。周辺にも異常は見られない。


 ……気のせい……だったのか?  


「どうかしたんですか?」

「何だ何だ、今のティアの動き。よく分からんが、格好良かったな」


 近くで見ていたのか、白姫とちゅう子が駆け寄ってくる。


「いや、部室棟の方で何か光ったんだ。だから狙撃かと思って……」

「「「――狙撃…………?」」」


 偶然にも声の揃った三人。

 しばらくポカンとした後、これまた揃って爆笑し始める。


「狙撃は無いでしょ! 狙撃は!」

「ティアさん……そ、それはさすがに……」

「狙撃って……くくく。ここ日本だぞ? 現実見ろティア……中二病か?」

「ちゅう子にだけは、言われたくないわ!」


 何でお前はこんな時だけ、正論かましてくるんだよ!?


 ……だが、よくよく考えれば、確かにおかしいのは俺の方だった。

 なぜなら日本の学校で狙撃事件なんて起こるはずがないのだから。

 それなのに『危ねえっ!』とか言って、透花を庇っちゃったりなんかして……。


「うあああ恥ずかしい。昨日のドラマのせいだぁぁぁぁ」


 一気に熱くなった顔を隠すようにしゃがみ込む。

 朝から透花を警護する脳内シミュレーションを繰り返してたせいだ。

 つーかドラマに影響受け過ぎだろ俺! 


「ほらみんな、あまり笑ったらティアちゃんが可哀想でしょ。私を守ろうとしてくれたんだよね。気持ちは伝わったから、ありがとね」


 と、透花はフォローしてくれるが……。


「透花……顔が笑ってる」

「あはは、ごめん。ティアちゃんが面白可愛くって……でも何かが光ったのは間違いないんだよね?」


 悪いと思ったのか、今度は真面目な顔で聞いてくる透花。


「あ、ああ……部室棟の方で何か光ったのは間違いないよ」

「そっか。うーん、狙撃は無いにしても、その光は気になるなぁ」

「そうですね。狙撃は有り得ませんけど、もしかして、誰かが女子の体操着姿を覗いていたとかですかね?」

「狙撃は有り得ないが、その可能性は高いかもだな。何しろ紅子様の美しさは太陽系一なのだからな!」

「何度も狙撃は有り得ないとか言わないでくれるかな! 悲しくなってくるから!」


 あと何が太陽系だよ。

 ドラゴンハーフ設定はどうしたよ? 急に宇宙持ち出すなよ。


 と、ちゅう子のボケはさておき〝誰かが女子の体操着姿を覗き見してた〟というのは、確かに一番現実的な推理だろう。

 ……だとすると、ターゲットは間違いなく透花だな。なにしろ透花は銀河系一の美少女なのだから。


「これは気を引き締めないとな……」


 俺は誰に言うでもなくぼそりと呟く。

 女になったとはいえ、透花を守るという俺の使命が変わることは無いのだから。

 ん? 女になった……? 

 いや、まさかな。さっきの光……透花じゃなくて俺を狙っていたとか? 


 なーんてな。それはさすがに考え過ぎだよな。



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3000PV超えました。

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ティアと透花のストーリーも、ここから更に加速&イチャイチャしていきますのでご期待ください!


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