第4.5話

 夢を見た。


 なんだか視界がフワフワしている。


 ぼんやりとした視界の中で声だけが聞こえてくる。


「カミサマ! 今日ね。みんながウチとカミサマのことお話してたよ。『チヨはカミサマの声が聞こえる』って!」



「カミサマ! 今日はね。みんなで川の魚をとったんじゃ! カミサマのおかげでいっぱいとれたよ!」



「カミサマ! これ! ウチからの贈り物じゃ!」



「ねぇカミサマ。チヨのお願いてくれるじゃろうか?」



「カミサマ。チヨはね……」



 ……これはなんだろう? カノガミの記憶か? この声。なんだか懐かしい感じがする。



「起きろ!! ソトッち!!」


 痛い痛い痛い!?


 大声と共に胸ぐらを掴まれて往復ビンタされる。


 これは……小宮の起こし方だ!!


「痛ってぇ!?」


「も〜私は先に行くよ! 早く着替えて学校行ってね!」


「あぁ……今起きるよ」


 眠い目を擦する。小宮に起こされるってことはギリギリの時間なのか。今。


 早く準備して学校行かねーと。


 ん?

 

 左手になんだか感触が……。髪の毛?


 布団の中を見ると、カノガミが寝ていた。



 心臓が跳ね上がる。



 なんでコイツ俺の布団の中にいるんだよっ!?



「ち、違うんだ小宮! 俺は何も……」



「何言ってるのソトッち? あ! もしかして!?」


 しまった!? 墓穴を掘った!?



「や、やめ……!?」



 小宮が勢いよく布団をめくる。



 ベッドの上にはカノガミが丸まって寝ていた。しかも、ご丁寧にセーラー服が着崩れてやがる。



 お、終わった……。



 よりにもよって小宮に見つかったりしたら大スキャンダルだ。学校中に噂が広まる。


 俺はエロ担当大臣として女子から軽蔑される学校生活を送るんだ……。



 さようなら。俺の青春。


 こんにちは。孤独。



「なんだよー! 何もないじゃん! てっきりソトッちのアレな本でもあると思ったのにぃぃぃっ!」


 小宮が心底悔しそうな顔をする。



 あ、そうか。



 カノガミって俺以外の人間には見えないのか。



「じゃ、起こしたからね!」


「お、おぉ……学校でな」


 小宮が出ていくと一気に部屋が静かになった。


 何にせよ助かった。俺の青春はまだまだ続くみたいだ。


 にしてもカノガミ置いて行っても大丈夫なのか? くっついてるとか言ってたよな?


「……ん」


 お、なんか寝言言ってるぞカノガミのヤツ。



「ふふふ。ジュン。寿命を渡すのじゃあ……」



 ……何言ってんだコイツ。

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