第9話

「にしても、お姉さん なんで竜と追いかけっこを?」

「好きでしてたわけじゃないわよ。ゴブリン!あいつらのせいよ!

 里へ帰るのに街道を外れて樹海のそばを歩いてたらアイツ等が追いかけてきたの。襲われちゃたまらないから反撃しようとしたら私にかまわず追い抜いて行ったのよね。その後をあの地竜が追ってきたわけ。

 何匹かが卵を抱えてたから そのせいね。

 今度あったら、一匹残らず仕留めてやるわ!」

 いわゆるトレインに巻き込まれた? 引き連れてるのは一匹だったけど、大陸鉄道の重連機関車だった感じ?


「それはそうと、さっきの案内の話。いいわよ。受けるわ。

 地竜からは完全にポインティングされてたから、あなた達に助けて貰えなくて逃げ切れなかったら死んでたか大怪我してたかもしれないし。

 時間が許す限りなんて言わずに、一生でもいいわ!

 もぅ私をあげちゃう‼貰って!!」

 再度抱きつこうとするお姉さんと僕の間にヘレナが入る。自慢のパワーでお姉さんを持ち上げうっちゃり。

 ヘレナ富士全勝を守りました?座布団が飛んでいます。


 お姉さんが体に付いた枯草を払いながら立ち上がる。

「この子もすごいパワーねー。

 見たところ普通の人族っぽいけど、狩猟系か何かの特殊な一族?

 あの竜を狩るときって私たちでも大人数で仕掛けないと倒せないのに一人で倒しちゃうし、、、」

「その辺は秘密の秘密ってことで内緒です」

 僕らの内情を会ったばかりの人に、ポンポンしゃべるものでもないだろうから、まぁ内緒です。

「わかったわ、これ以上は聞かない。

 その代わりと言ってはなんだけど名前教えて?

 私はノイスイェーナのスティア、あなた達は?」

「僕はーー ケイです」

 なんとなく思いついて名前を短縮してみた。

 昔は本名を忌み名と言って人に知られると・うんぬんかんぬん などということもあったと聞いた事があるし、魔法がある世界だしで用心するに越したことはないだろう。


「私は ミナミハルオでござ「この子はヘレナです」」

 そんな古いネタどこで覚えてきたの。。ネット?ネットなの?


 ◇◇◇◇◇


「それじゃー、これどーしようかしら。町から解体と運搬の専門職を呼んで運ぶにしても ちょっと行って来るには距離がありすぎるし、残念だけど全部置いていくしかないわね」

スティアさんが僕の方を向いて今後の方針を説明しようとしている向こうでは、

「お肉♪ お肉♪ 大きなお肉ー♪」

肉食幼女が剥き身の大太刀片手に地竜のかたわらで謎の踊りを踊っている。謎の儀式が終わるとおもむろに刃を入れた。

リブロースの辺りかー。刃の入り方みるとアバラごと斬ってるような気がするけど、斬れるんだあれ。

背骨に沿わせてズリズリと切っているのを見ていると太刀がまるでマグロ解体包丁のようだ。

50センチ四方くらいに切って、骨付き高級部位のブロックをこちらに持ってきた。

「お兄ちゃん、今日食べる分切れましたー!」

「はっぁ⁉」

スティアさんが目を点にしていた。

「おぉ、ヘレナ偉い!お昼にはまだ早いから本体と一緒にしまっとこうか。ついでに倒れた木も貰っとこ」

ヘレナの切ってきた分と本体とを次元収納にしまうと更に瞳孔が小さくなった。

「えっ?えっ?えっ? なにいまの、ちりゅう どこ? どうぐもないのにちりゅうの てつみたいにかたいかわとほね あんなきれいにどうやってきるの?えぇーーー?」

呆然としてたちつくしている。色々ありすぎて表面張力を超えたか?暫くそっとしといてあげよう。


銃やらイヤマフをしまい、そろそろ復活したかと思ってスティアさんの所に行くと、

「そっか わたしちりゅうにひかれてしんじゃったのね。 ここはしんだらくるせかい?

でなきゃ、むらについてあったかいべっどで おふとんかぶってねてるの。

ぜんぶゆめだったのよ。」

まだ、自分の常識と目の前で起こった事との整合の調整作業の真っ最中だった。

しょうがないから体を抱えて地面にそっと寝かせて介抱する。


「ソフィア 今までに在庫した薬草の中で一番不味いのどれ?」

『鬼ですか?主』


なんのかんのと言いつつ目的に合った薬草を選んでくれたので取り出し、なぜか収納に入っていた薬研で磨り潰す。

煎じようかとも思ったけど火を起こすのはメンドウなので省略。

なぜか入っていた乳鉢でヘレナに混ぜ潰し作業をしてもらいつつ、マナを込めて生成しようと努力したけど込められているかどうかわからない水と混合する。

ガーゼで濾してビーカーに溜め、水差しに移す。

「初めてのポーションかんせーい!」

『この液体をポーションと呼称するのはどうかと思います。』


スティアさんの脇にしゃがんで少し頭を上げて支え、そっとポーションを口の中に流し込む。


ブフーーッ! エーホッ!エホッ!エホッ!ゴホッ‼

ポーションを盛大に吹きだした後 地面に四つん這いになり えずいている美女。どこかにニッチな市場がありそうななさそうな。


ところでソフィア、あの薬草って普通どう使うの?

『主に毒などを誤摂取した時の嘔吐薬として使用します。』 

薬効としては完璧だね。



―――――――――――――

読んで頂きありがとうございます。

気に入って頂けたら、作品フォローとか、♡応援とか、★評価、を宜しくお願い致します。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る