第52話:夏祭り②
祭りを楽しんでいたら偶然、奏多の妹である結華とその友達に遭遇した。
お互い祭りにきているのだからこうして見かけることはあるだろう。
「この人が結ちゃんのお兄さん?」
「そうだよ」
すると二人はまじまじと奏多を見つめてくる。
「案外カッコいいかも?」
「分かる~。お洒落したら絶対カッコいいよ」
「初対面なのに失礼だな……」
すると二人は両手で口を押えて気まずそうな表情を浮かべ、遅れて頭を下げた。
「ごめんなさい」
「悪気はなかったんです。ごめんなさい」
素直に謝罪できるのはいいことだ。
場所を移動して奏多は改めて自己紹介する。
「結華の兄の奏多だ。いつも妹が世話になっている」
「逢坂里桜です。先ほどは本当にごめんなさい」
黒髪ロングの少女、里桜は頭を下げた。
続けて茶髪のポニーテールをした少女が自己紹介をする。
「朝比奈凛です。本当にごめんなさい!」
凛と名乗った少女も深々と謝罪する。
「頭を上げて。気にしてないから大丈夫だよ。それに謝罪もしっかり受け取ったから」
顔を上げた二人は「ありがとうございます」とお礼を言う。
そして奏多の隣にいる世那に視線が向けられる。
「あの、もしかしてその人が結ちゃんの言っていた?」
凛の言葉に結華は頷いた。
「うんうん。世那お姉ちゃんだよ」
「初めまして。天ヶ瀬世那と申します」
丁寧で綺麗な一礼に二人から「ほぇ~」とよくわからない声が漏れ出していた。
加えて、世那の美しさに見惚れていた。
「あの?」
世那の問いかけで我に返った二人は短く自己紹介をする。
自己紹介を済ませ、二人は世那に質問していた。
「世那さんはお兄さんと同棲しているって結ちゃんから聞きましたけど、本当なんですか⁉」
「私も気になります! お風呂とかはどうしているんですか⁉」
質問に世那は目を回していた。
年頃の女子というのはこういう手の話題には敏感なのである。
世那が助けを求めようと奏多に顔を向けるので、仕方なく助けることにした。
「二人とも世那が困っているだろ」
「あっ、ごめんなさい。つい……」
「ごめんなさい」
しっかりと反省しており、悪い子ではないというのが分かる。ただ自制が苦手なのだろうと考えていた。
ある程度の質問に答え、五人でお祭りを回ることに。
世那は三人から人気で、奏多は保護者のような気分になっていた。
程なくして、祭りも終わりが近付いてきた。
「そろそろ祭りも終わりか」
「そうだね。お兄ちゃんと世那お姉ちゃんはこれからどうするの? 花火を見てから帰るの?」
「そのつもりだよ。近くの高台になっている神社に行こうかなと。せっかく父さんに勧めてもらったから。それに、あそこからの花火の眺めはいいからね」
「そっか。なら私達は近所の公園で花火を見てから帰るよ」
「俺も世那も見たら帰るけど、結華も帰りは遅くならないようにな」
「わかってるよ。でもお兄ちゃんはゆっくりでもいいからね」
「うん?」
どういう意味で言っているのかが理解できなかった奏多は首を傾げた。それを見て結華は世那に耳打ちする。
「あの場所はほとんど人がいないスポットだから、ゆっくり楽しんで見てね」
「ふぇ⁉ そ、それはどういう意味で……」
「さぁ? それじゃあ」
そう言って結華は先に向かってしまった。
「里桜ちゃんと凛ちゃんも気を付けて帰るようにね」
「二人ともお気を付けて」
「はい。ありがとうございます! お兄さんと世那さんもお気を付けて」
「今日は買ってもらったりしてありがとうございます! 花火楽しんでくださいね!」
元気に手を振った二人は先に歩いていた結華の隣へと駆け寄る。
再度振り返り、笑顔でこちらに手を振る二人に、奏多と世那も小さくだが手を振り返した。
「それじゃあ俺達も行こうか」
「はい。早くいかないと終わっちゃいますからね」
二人は神社に向けて歩を進めるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます