第23話 異学生

「んん……っ、あれ?」

 目を覚ますと、そこはリリーの家ではないことが分かった。

 そして徐々にぼんやりとした視界が安定し、ここは自分の部屋だという事に気づく。

「……確か、リリーの家にいたはずじゃ」

 全裸のリリーを見た後、自分はどうなったのか知る由もない。

 あまりの興奮に気絶した?……あり得ない。

「……まあ、いいや」

 とにかく、リリーの安全は確認できた。

 ゆっくりとベッドから起き上がり、リビングへと向かう。

リビングの扉を開けると、

「――ッ!?」

「な……ッ!?」

「きゃっ――!」

連人は、リビングに入らなかったら良かったと後悔した。

連人が目にしたものとは、フェアリーとピジーが、園江そのえ高校のセーラー服を着ようと下着姿になっていたこと。

フェアリーは顔を赤らめそっぽを向く。ピジーは、肩をビクッと震わせ、顔をこちらに向ける。

「れ、れれれ連人!?き、急に入ってくるなぁぁぁぁ!」

「!こ、これはあの……!」

なんとか言い訳をして逃れようと、必死に言葉を考える。

「いッ、いいから出ていって……っ!」

「おっふ!?」


速すぎて分からなかったが、恐らくピジーの右肘が連人の胸あたりを強打し、そのまま後方へ飛ばされ、壁に背中を打ち倒れ込んだ。

それと同時に、ピシャンッ!とリビングの扉が閉まる。

その見た目からは想像もできないような力を、身をもって体験してしまった連人。

「ごほっ……ただの子供じゃねえな……ッ」

咳き込みながらそう呟き、しばらくの間その場でモゾモゾとうごめくだけだった。



五月八日 (月)


朝、いつも通り玲華と挨拶を交わし自分の席につくと、ガララと教室のドアが開く。

入ってきたのは、担任である詩音だった。

「急なんだけど、今から転校生2人紹介します」

「……2人?」

その言葉に、連人は思い当たる節があった。

隣にいたリリーは、連人に目を向けてくる。

「……………」

特に反応はすることも無く、ただ生唾をゴクリと飲み込んだだけだった。

「じゃあ、入ってきて」

詩音がそう言うと、小柄な生徒2人が入ってきた。

片方はピンク色の髪、もう片方は薄い青っぽい色の髪。どちらも見慣れない髪色だった。

クラス一同が息を飲む。

と同時に、1人づつ黒板に字を書いていく。


――フェアリー ピジー



「私の名前はフェアリー。仲良くしてください」

フェアリーと名乗った少女は、律儀にお辞儀をした。

「わ、私の名前はピジー!何が変なことしたら、頭かち割るから覚えておきなさいよ!?」

ピジーと名乗った少女は、さっきの子よりもかなり言葉遣いが荒い。そして、転校してきて早々「頭をかち割る」なんて言葉、聞いたことない。


「……なぜ」

その2人を知っている(というよりも、家に住まわせてあげてる)連人は、嫌な汗が止まらなかった。

「連人くん、何が聞いてる?」

と、隣にいたリリーが耳打ちをしてくる。

……何かを聞いてるはずがない。

連人は静かに首を横に振った。

「は、はーい、2人ともありがとうございました。じゃあ、どっちかはそこの席に座って」

詩音が指さしたところは、廊下側二列目の1番後ろの席。

「じゃあ、私が座るよ」

 率先して声を上げたのは、以外にもピジーの方だった。

軽やかなステップと共に、空いている席に座る。

「じゃあ、フェアリーさんはそこ」

「は、はい」

緊張気味に詩音が指さしたところに向かい、周りの目を気にしながら着席。

廊下側3列目の1番前だった。

「じゃあ、ホームルーム始めまーす」

「…………っ」



 

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