第22話

小学校を卒業するころにはだいぶ生活にも慣れていた。

父からプレハブ小屋をもらい、母屋とはあまり接点のない生活をしていたし、祖母と関わることも減っていって、学校に行けば本を淡々と読むか机にうつぶせになるだけだった。

藤と関わるようになったのはこのころだった。

ペンケースを忘れてどうしようかと思っていた、担任の先生には話しかけたくないし、クラスのグループに所属している女の子たちは私にペンなんて貸してくれないだろう、男の子にも話しかけることは憚れる。

「ペン無いの?使う?」

「…ありがとう。」

藤は全く事情を気にしていませんといった感じで話しかけてきた。

久しぶりにクラスメイトとまともにお話しをした。

藤は当時の私のことをすごく暗くてずっと本を読んでいる子だと思っていたようで、今は相当明るくなったねと言ってくれる。

今の私も当時の私を見たら陰鬱な小学生にしか見えないと思う。

毎日洗いざらしの適当なTシャツによれた長ズボン、長い髪の毛はずっと後ろで縛られていた。

多感な時期だというのにおしゃれには全く無頓着ですという服装をしていた。

多感な女の子たちからしたら関わりたくないタイプの人間だったと思う、りりこは男好きといわれていたのが恥ずかしくて、スカートなんて履けなくなっていたし、いい匂いもしないのだ、おしゃれすることなんて私には縁がないし、おこがましいと思っていた。

自身のなさも体全体から出ていたと思う、帰りは猫背で速足で歩くのだ、気味が悪いと思われていただろうか。


そんな状態の私を気にしてませんよと言わんばかりに会話をしてくれた藤には今でも感謝している。とても不思議な子に思えた気がしたが、今関わっていて思うのが とても自由な女の子だということだ、世間体もしがらみも全部私には関係ないです、好きなものは好き、興味ないものは興味ない、はっきりしているところがとても好きだし尊敬している。

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