第21話 -×-=+ (マイナスかけるマイナスはプラス)

「……見かけ倒しも良いとこだな」


俺が勝ちを確信してそう言うと、イロウは謎の含み笑いを始める。


「ブワッハッハ……甘い、甘すぎるぞガキが……」

「何笑ってんだ?」


ほとんど勝負はついてるこの状況で何を考えてる?


「貴様にはまだ分からんだろうがな……

大人は殴り合いに負けた所で負けでは無いのだ」

「?」

「権力、コネ、金、使える物を全て使って立ってる奴が勝ちなんだよ!」


そう言うと、イロウは胸もとから赤い水晶のようなものを取り出して、

何か水晶に向かって喋っている。

……まるで電話のような?


「とにかく!今すぐ来い!来れないならカローか奴のガキを捕まえてこい!」


イロウがそう怒鳴ると、水晶を地面に叩きつける。


ビーッ!ビーッ!


けたたましいブザー音に場が包まれた。


「……偉くなると様々な所につてが出来るのものでな、このボタンを押せば

この辺のチンピラ達が私の敵を排除しに駆けつける。

これがどういう意味か分かるか?」

「援軍登場ってことか?」


まずいかもしれない。

イロウを倒したとしても既に連絡は済んでいる。

早く逃げなければ数の暴力で負ける事間違いなしだ。


「……こういう時は逃げるが勝ちだ!」

「させると思うかぁ!?」


俺が駆け出そうとした瞬間、正面の出口にイロウが立ち塞がる。


(クソ……他に出口は?)


窓など出ようと思えば出られそうな所はあるが……


「……窓が気になるか?アレは特別仕様でな、通常の三倍程の強度を持つ魔法さえ通さない鉄壁の窓なのだ」

「なんのための窓だよ!」

「ブワッハッハ!何とでも言え!どちらにせよ貴様の負けは決定事項だ!」


そう言い放つイロウにさすがの俺も焦りを感じ始める。


(どうする……?)



一方その頃、セイラとモモの兄はちょうど町役場に続く道を歩いていた。


「もしかしたら妹は父に会いに町役場に行ったのかもしれません、職場なので」


「……自分の事のように分かるんだね」


「ええ、もちろん!仲良い兄妹ですし!」


(……私はお兄ちゃんが考えてる事分からないのに)


そんな事を思っていると、前から二人組が走ってきていた。

身長から見るに親子かな?


「……ん?あれ、お父さんとモモ?」

「え?」


どうやら彼の父と妹らしい。


「……ゲホッ!……ずっと事務仕事だったから走るのなんていつぶりかな……」

「お父さんしっかり!……あれ?お兄ちゃん?」

「モモ!お前どこに行ってたんだよ!それに、なんでお父さんと……」

「カキ……説明は後だ。とにかく町役場から離れないと……」


……いったいどういう状況なのか全く分からないが、とにかくこの子……カキの

妹は見つかった。自分は帰ろう。そう思った時だった。


「あれ〜!?そこに居るのってイロウさんが言ってたカローじゃね?」


突然背後から大きい声が聞こえて振り返ると、十人……いや二十人くらい

のチンピラの団体が居た。


「……なに、あんたら?」

「……あ!てめえはさっきの強気な女!」

「……?」

「おい忘れたとは言わせねぇぞ!さっきは良くも俺の目を……!」


……記憶を探る。

そうだ、コイツはカキにカツアゲしようとしてたチンピラだ。

まさか再会するとは思わなかったな。


「……君達はイロウの手下か?」

「ああそうだぜ!カローさんよぉ〜!てめぇの身柄を

イロウさんのとこに持っていきゃあ、お給金が出るのよ!

しかし、そこの女はてめえの娘かなにかか?」

「……違うよ」


私はこの人の家族じゃないし、仲間でも無い。

本当なら助ける義理なんてない。


「やめてよ……」

「あぁん?」

「お父さんをつれてかないで!!!」


モモが力強く叫んだ。

……もし、自分だったら父親を守るために大人に立ち向かえただろうか。


「うるせぇな!退いてろ!」


不思議な事に、モモと昔の自分の姿が重なって見えた、

強い意志が有って、行動もできる。


でも力も何も持っていないから悪い大人に簡単に潰される。

潰されていく弱い自分を誰も助けてくれない。


……私はそう言う現実が大嫌いだ。


「……おい、なんだよ?もしかして邪魔する気か?この人数相手に?」

「ええ」

「はは!コイツは良いや!ムカつく女に復讐出来て仕事も進む!

一石二鳥とはこの事だぜ〜!」


これはただの八つ当たりに近い。


正義とかそう言う綺麗な事のためじゃなくて、

私の嫌いなモノを否定するための行動だからだ。


「あの……大丈夫ですか?」


父親が心配そうにそう聞いてくる。


「大丈夫だよ!お姉さんすっごく強かったもん!」


まるでヒーローを見るような目で、カキがそう言う。


「そう、私は強いの。だから安心して見ててね」

「ッ!てめぇ、この人数前にカッコつけんなよ!」

「……上級雷魔法。響いて貫け、ギガサンダー……」


右手に魔力を込め、魔法を詠唱する。

バチバチと音を響かせ、光を放つ大きな雷が右手に顕現していく。


「は?おい、ちょっと待っ」

「待たない!」

バチバチバチ!ビシャン!!!!!


「「「ぐあああああああ!!」」」


一本のビームのように右手から放たれた雷の力はチンピラ達を纏めて貫いた。


「もう終わり?」

「お前、いや。ふざけんなよ……」


何人かは口を聞けるようだが、

ほとんどのチンピラ達が全身を痙攣させながら地面に倒れる。


「すっごい……」


思わず、モモはそう呟いた。



セイラ強すぎ。

そう思ったら★とかフォローとかお願いします。


↓おまけのキャラ強さ指標。

セイラ>エリト≧ノーティス≧マロン>イロウ>ザコス>カイ


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