第30話 債務処理②

ドルボとガルダは応接室に通される。

そして、部屋の奥側の席、上座に座るよう促される。

すかさず、お茶と茶菓子を出される。

香り高い花茶と芋菓子。


--獣王様から、冥王殿は芋菓子を好まれると伺っていたが…。それを我らに出すとは…。債務の支払いの猶予を願い出る者に対する扱いではない…。


--上座に座らせるとは…。席すら与えられぬこともあり得ると思っていたのだが…。


ドルボとガルダが思いもよらぬ歓迎に驚いていると、No.3アル・バーニヤとNo.4ビテクが部屋に入ってきた。


「ふぉっふぉっふぉっ。勇猛なる獣魔将のお二方。

我ら冥王軍、お二方の訪問を心から歓迎致しますぞ。」


「No.1サム及びNo.2ステラの両名は、財務に明るくないため、この私No.4ビテク及びNo.3アル・バーニヤが対応致します。重ね重ねのご無礼、寛恕いただければ幸いです。」


アル・バーニヤとビテクはそう言って下座につく。

厳密に言えば、アル・バーニヤとビテクは獣魔将であるドルボとガルダより階級が低いため、本来であれば直接話せる立場ではない。

冥王軍において獣魔将と同等の者は、冥魔将なのだが、唯一の冥魔将であったラクシュバリーは200年前の大戦において、勇者が放った雷の力によって滅ぼされたと伝えられている。

ラクシュバリーの代わりに冥王軍統括の座についたガイコツには『冥魔将』の称号は与えられていないが、立場は同等のものとされる。

このため、本来であればガイコツがドルボたちへの対応をすべきなのだが、ビテクたちが対応している。ビテクの言う『無礼』とは、このことを指す。


「アル・バーニヤ殿、ビテク殿。我ら、そのようなことを問題にする気は一切ござらぬ。」


「今の我らがあるのは、冥王殿の御助力があったからこそ。我ら獣人族、冥王殿には感謝してもし尽くせない思いです。」


ドルボとガルダはアル・バーニヤとビテクに答える。


すると、アル・バーニヤとビテクは表情が分かりにくいスケルトンであるにも関わらず、はっきり分かる笑みを浮かべて言った。


「ふぉっふぉっふぉっ。ドルボ殿、ガルダ殿。我が主の願い、獣王殿に聞き入れて頂けると確信いたしましたぞ。」


「そうですな。図々しい願い故、控えるよう言われていたのですが…」


--しまった!言質を取られた!これでは、金貨50万枚を耳を揃えて返せと言われても断れぬ!


ガルダは歓待に気を良くして口を滑らせたことを後悔したのだった…。

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