第14話 勝鬨

 大賢者は上空で冥王と一騎討ち、獣王軍の弱点である魔法攻撃は冥王により無効になった。

 獣王軍参謀ドルボは指示を出す。

「右翼、火猿、岩亀進軍せよ!左翼、風鳥、氷蛇進軍せよ!魔法は効かぬ!包囲殲滅せよ!冥王殿のお心遣いに応えて見せよ!」


「獣王軍四天王が一人、火猿、承りました!」

「同じく岩亀、進軍致す!」


「同じく風鳥にお任せあれ。」

「同じく氷蛇、やったんで!」


 獣魔将“火猿”カガチ、“岩亀”ブンゲ、“風鳥”ガルダ、“氷蛇”ナーダが答え、右翼と左翼が王国軍を囲むべく散開する。散開する獣王軍に向けで火球や雷が降り注ぐが、闇のベールがそれらを打ち消してしまう。


「獣王軍本隊!勇者どもが右翼左翼へ救援に向かうのを阻止せよ!俺が勇者どもを片付ける!我らが忠誠を示すときぞ!」

 獣王が檄を飛ばす。


 ーーうおおおおー!ーー


 獣王軍から勝鬨が上がる。獣王軍はこれまで獣王の圧倒的な武威を見せられ、そして今、冥王の加護を受けた。これで士気が上がらない訳がない。

 対する王国軍には、各地域の敗残兵も動員されている。彼らが動揺し始めている。直ちに立て直さなければならない。


「くっ、戦士職は魔法職を守れ!魔法職は支援魔法に集中せよ!大賢者が冥王を片付けるまで耐えよ!」

 勇者の指示は全軍に伝えられる。冥王の参戦が予想されたため、大賢者が戦場から離れても耐えられるように指揮系統を構築している。

 しかし、攻撃魔法が無効という状態は王国軍に都合が悪い。


「聖女殿!冥王の邪法は解呪できないのか!」

 剣聖は大賢者の次に魔法に精通している聖女に尋ねる。


「冥王が詠唱を必要とするレベルの大魔法です…。大賢者様でなければ…。それが分かっているから冥王は…!」

 冥界のマナを召喚し、それを魔法に対する防壁とする大魔法。ある程度の仕組みは分かるが聖女にはどうすればいいのか見当もつかなかった…。

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