第27話 アナタが翼ちゃんなのね。そっか♪


「じゃあお姉ちゃんはもう学校行きますので」

「あれ? もう行くの?」


 まだ6時だと言うのに出かけようとする静姉(静妹モード)を見て俺は少し不思議におもう。いつもの調子なら一緒に行くとか言いそうだったけど。


「不思議そうな顔をしてますね。いいでしょう。教えてあげます。お姉ちゃんは先生なんですよ。先生っ」

「あぁ、そういう」


 先生というのが余程嬉しいのか何度も繰り返し、自慢げに胸を張る静姉。……本当に静妹モードの時は馬鹿みたいに可愛い人だ。


「頑張ってるんですよ。なんなら頭をナデナデしてくれてもいいんですよ〜」

「じゃあ、いってらっしゃい」

「むぅ」


 朝っぱらから変なことを言い始めた静姉を強引に玄関へと押していき早く見送りの挨拶をする。なんか若干不満そうだがいつものことなのでスルーだ。


 妹モードだから知能が低下してるのと朝だということもあってかアホと化しているので面倒くさい。いや、姉モードの時は暴力的だからそれも嫌なんだけどな。

 しかし、流石に間に合わなくなると思ったのかぶつくさ言いながらも静姉は出発したのだった。


 *


 久しぶりに普通の時間に出た今日。正直、新井を避けることよりも静姉を避けたいという意思の表れである。ではあるのだが今日は歩いていても新井が来るなんてことはなかった。


 というか昨日の昼も来てないし熱でも引いているのだろうか? だとしたら前に看病してもらったしお見舞いくらい行くべきか?

 いや、俺が新井が熱かを聞くのはリスクが大きい。というか噂が更に広まりそろそろ学校じゃ収集つかなくなりそうだ。


 一体どうしたもの___。


「光太郎にぃ、光太郎にぃ? 大丈夫?」

「うおっ、って新井か! びっくりした」


 俺がそんなことを考えていると、いつの間にやら俺の隣に来ていた新井が俺の顔を心配そうに覗き込んできた。

 びっくりした。完全に考えるのに意識奪われすぎた。


「もう少し足音くらい鳴らせよっ」

「いつもの光太郎にぃなら気づくから……」

「ぐっ」


 そう言えば昔よく新井が何度も俺にバレないように近づこうとしていた時期があったなと俺は思い返す。

 だが新井の様子をみればバレずに近づくことが目的ではないのは確かだ。恐らく昔の行動が癖になってしまっているのだろう。

 ほぼ、無意識みたいなものだ。


「にしてもやっぱり静さんのことで疲れてるの?」

「……お察しの通りだ」

「やっぱりかぁ」


 俺の学校で唯一静姉と話したことのある新井の目は誤魔化せない。いや、まぁ一度話せばとても大変ってことが分かるんだけどな。

 ただ今回に限って言えばそれだけじゃない。


「ただもう一つ理由があってな」

「そうなんだ」

「お前のことばっか考えてたら周囲の警戒を忘れてた」

「っ!?」


 新井のクラスメイトに尋ねるべきなのかそうでないのか困ったからなぁ。


「そ、それならしょうがないですね。でも、心配は心配なので私が一緒にいてあげます」

「やめてくれ」


 何故、唐突に上機嫌になったのかは分からないがそんなことを言い始めた新井を俺は全力で止める。


「光太郎にぃがボケーとしてるから悪いんですよ」


 しかし新井にそんな風に言われてしまい黙り込むのだった。……くっそ、なにも言い返せない。



 *



「アナタが翼ちゃんなのね? 光太郎からの手紙でよく見たわ」

「は、はい。一応、光太郎くんの友達をやらせてもらっている琴吹ことぶき つばさです。ふ、ふつかものですがよろしくお願いします」

「いや、それ色々と間違ってるわよ」


 俺が教室へと入るとそこには翼の席の前に立ち翼と話している静姉の姿があった。いや、俺一度たりとも手紙なんてもの出した覚えないんだが!?

 どうせ、アンタの変態情報ネットワーク術を用いて俺の仲良い奴を把握してたんだろっ。


 というか、なんで翼はあんなに顔を真っ赤にしているんだ。翼は初対面であっても人と臆せず話すことが出来るはずだが……一体なにをしやがった静姉!!!







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 次回「可愛い子達ねぇ」


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 では!

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