第20話 伊賀ハーレムってなんですか?


「あっ、先輩チース」

「またお前か……」

「嫌そうな顔しないでくださいよっ」


 俺が今日も朝早く学校へと向かっているとまた後輩イケメンくんと会った。……2日連続とかどうなってんだか。


「んで、今日は何の用だ? 昨日の件に進展でもあったか?」

「いや、特に用はないんすけど……なんとなくっす」

「じゃあな」


 後輩イケメンくんの言葉を聞いた俺は一刻も早くその場を去ろうとする。


「なんでですかっ。たまには用なくても話したっていいじゃないですか」

「いや、だってお前と話してるとたまに凄く疲れるんだもん」


 そこを後輩イケメンくんに引き止められ俺は振り返りながらそう答える。昨日も変なファイル渡されたしな。


「あっ、あと先輩、伊賀ハーレム形成してるってマジすか? 自分としては新井さん一筋がいいんですけど」

「新井とはそういう関係じゃねぇわ。えっ、てか伊賀ハーレムってなに?」


 なんかとんでもないワードを聞いた俺は真顔で後輩イケメンくんに尋ねる。なんかとても俺にとって好ましくないワードなんだが!?


「えぇっと、新井さんは勿論ですけど2年生の先輩方の中で男子から密かに人気がある元気っ琴吹ことぶき つばさ先輩に、更に昨日学校のアイドルの長坂 可憐さんも加わってついにハーレムを形成したって聞いたんすけど」

「嘘まみれな上に、特に長坂さんのは訳が分からないんだが!?」


 長坂さんとは昨日少し話しただけなんだが一体どこで見られたんだ? まさか本人が言ってるなんてことないだろうし……。あぁもう、事態はドンドン悪化していくな。


「特に先輩は長坂さんを気に入ってるって聞いたんすけど……マジすか?」

「1番ねぇわっ! その中だったら翼とか新井選ぶわっ!!」


 あの人、昨日一回話しただけでもヤバイってのがバンバンに伝わってくる人だったからな。絶対にあの人だけはゴメンだ。


「あー、やっぱり嘘したか。なーんか変だと思ってたんすけど。やっぱり先輩は新井さん一筋ですもんね」

「それも違うわっ」


 後輩イケメンくんが爽やかな、それはもう太陽が快晴超えて爆発したんじゃないかってレベルの笑顔を見せながらそんなことを言うので慌てて間違いを訂正する。


「まぁ、でもなんか今回の噂は変っすね。基本的に学校生活送ってたら噂は絶えませんがここまで完璧な嘘で構成されたものとは」

「あぁ、俺としては噂ばら撒いている奴らを見つけたいもんだが」


 今までの噂と違い今回のはなにか悪意を感じる。いつもなら見過ごすが今回のはそれが出来ない。まるで何者かが仕込んだように感じて仕方ない。


「先輩……それ、分かるっすよ」

「マジか!?」

「今回の噂は俺も少し気になったので調べておいたんす。はい、これがリストと証拠っす」


 そう言って紙を取り出して手渡して来る後輩イケメンくん。……というかやっぱり用あるんじゃないか。


「というか先輩、丁度そいつら来てますよ」

「そんなことあるか?」


 俺が資料に目を通しているとそんな言葉を聞き思わず顔を上げる。するとそこには資料に載っていた顔ぶれがあった。マジじゃん。

 というか……。


「お前……アイツらがこの時間にここ通るの知ってて俺をワザと足止めしたろ」

「な、なんのことっすか? ヒュ、ヒュー」


 俺が少し疑惑の視線を向けると後輩イケメンくんは目を逸らして吹けもしない口笛を鳴らしていた。……なんでそこだけ誤魔化すの下手なんだよ。


「まぁ、なんだ。ありがとな」

「いえ、ファンとして当たり前のことっす」

「そういうとこさえなければなぁ」


 感謝を伝えた後のこのガッカリ感よ。本当にいい奴なんだけどなぁ。まぁ、それはともかく悪意ある噂を流した奴らは……制裁といきますか。



 *



「昨日のお笑い番組見たか?」

「見た見た! あの洗濯機のネタが最高だったよね」

「……分かってないな。あれは焼き肉のネタが最高だっ____ガバァッ」

「な、なんだ!?」


 俺が目にも見えない攻撃を加えると呑気に歩いていた1人が吹き飛ばされ宙を舞う。当然、一緒に歩いていた奴らはなにが起こったのか分からず困惑している。


 ただそれじゃあ意味がないから教えてやるとしよう。……この馬鹿な後輩どもに。


「やぁ、後輩くんたち。俺の噂、好き勝手に流してくれたみたいだな」

「あ、アンタだれだよ。というか青山の奴になにした?」

「待って、というかこの人伊賀先輩じゃない!」


 おっ、女子生徒の方は俺に反応したな。男の方もこの狼狽えようを見るに心当たりがあるのか。完璧に黒っと。


「なぁに、いつもならお前らみたいな輩は縛り上げる所だがお前らは可愛い後輩だしな。

 さっきその青山くん?とやらにもやったようにデコピンだけで済ませてやるよ」

「ばっ、あれがデコピンの威力のはずが」

「なら実際に体感してみろ。ほれ」


 俺の言葉を信じない男子に俺が軽くデコピンをすると青山くん?と同じように吹っ飛び宙を舞っていってしまった。最近の奴は軽いなぁ。


「えっ!? 嘘でしょ」

「あっ、安心しろよ。俺は男女平等で通ってんだ」

「い、嫌よ」

「恨むなら、俺の友達にまで害を与えるような噂を流した自分自身を恨むんだな」


 そんなわけで男女平等な俺は残った女子生徒1人にもデコピンを食らわせる。

 これで少しは反省したかな?



 *



 お、恐ろしい。なんなんですかあの男。というか伊賀 光太郎! 新井が好きな男ですから只者ではないとは思っていましたがデコピンで人をあそこまで……。普通にバケモノの域じゃありませんか!?


 ……楽勝かと思っていましたが少し計画を見直す必要があるかもですね。




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 伊賀くんが色々とアレな回でした。一般人とか言ってたのどこのどいつなんですかね。


 次回「家族が増えました……って増えるかっ」


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