第18話 学校のアイドル降臨


「先輩〜、ただいま戻りました! って、なに見てるんですか?」

「えっ、あっいや。ちょっとな」


 お花摘み(トイレ)から戻ってきた新井に後ろから声を掛けられ俺は声の方へと慌てて振り返る。


「む〜、なんかその反応怪しいですね。な〜に、見てたんです?」

「いや、そんな大したものは……」


 俺はなんとなく見てたものを見られるのはマズイと直感し、隠そうとするが新井によって押しのけられてしまい結局見られてしまう。


「わぁ、凄い美人さん」


 すると俺が見ていた人を見た新井は感嘆の声を漏らす。

 そう、そこには街を歩けば見た人は恐らく振り返って二度見すると断言出来るレベルの美人が立っていたのだ。しかも目立つ金髪の。


「ふ〜ん、それで先輩見てたんですね。美人さんですもんね。しょうがないですよねっ?」

「違うって。なんかどこかで見たことある人だなと思って見てたんだよ」


 すると新井にジト目で見られそんなことを言われてしまった俺は急いで否定の意を示す。というか実際そうなのでこれ以外に答えようがないのだが。


「まぁ、いいんですけど。先輩がああいう美人さんがタイプでも全然構いませんが。ふんっ」

「だから違うって」


 しかし新井はジト目のまま俺への疑いの目を変えない。……本当にどうしたらいいんだ、コレ。

 まぁ、俺と新井は付き合ってないし別に俺があの美人さんを綺麗だなっと思って見てたとしても悪いことではないんだが、そういうつもりで見てないのにそう言われると無性に否定したくなるのが人間ってもんだ。


「お、おーい、2人ともなんの話してるの?」


 と俺と新井がお互いに睨み合っているとそこに少し遅れて翼が合流してきた。というかなんか顔赤いけどどうしたんだろうか?


「おい、翼その顔って」

「な、なななにが!? 僕がどうしたって」


 俺が声をかけると明らかに動揺したように言葉を乱す翼を見てこの話題は避けた方がいいなと悟った俺は別の話を振ることに決める。

 翼だけ遅かったことも含めてなにかあったのは確実だが今は変に問い詰めるべきじゃないな。


「それより、あの人なんだがどうにも見たことがある気がしてな……翼知ってたりしないか?」

「翼先輩、あの美人さんを伊賀先輩ずっと見てたんですよ。あの美人さんが羨まし____可哀想だと思いませんか?」

「いや、知ってるというかあの人ウチの学校の長坂さんだよね」


 俺が尋ねると落ち着きを取り戻した翼が当たり前のようにそんなことを言う。


「「長坂さん?」」

「まぁ、新井ちゃんは入ってきたばっかだしその反応も分かるけどこうくんのその反応はどうなのさ……彼女、2、3年生では知らない人がいないくらいに有名で学校のアイドルと言っても過言じゃないんだけどね」


 しかし、俺たちの返しに翼は(主に俺に)呆れたようにため息をつく。


「まぁ、彼女二年生だしこうくんが興味がなかったとは言っても目立つからどこかで見たことがあって覚えてたんじゃない?

 見た通り美人だしね」

「まぁ、そう言われればそうか」


 同じ学年でそんなに有名なら見たことくらい確かにあったかもなと俺は一応納得する。


「というか、なんで長坂さんがこんなところにいるのか僕は不思議なんだけどね。彼女の性格から考えてこんなところに来るとは思えないんだけど……」

「堅い感じの性格なのか?」


 翼の言いたいことがよく分からない俺がそう尋ねると、


「あぁ、こうくんは全く情報持ってないんだっけ? 彼女はね、確かに美人さんなんだけど」

「先輩達、その長坂さんの前になんか変な男の人達来ましたよ?」


 とそこまで翼が言ったところで長坂にいかにもチャラそうな男達2人が声をかけていた。

 ナンパだろうか? 長坂さん1人だしなんか言い争いになってるしこれは止めたほうがいいのだろうか?


「止めようなんて考えない方がいいよ?」


 すると俺が考えていることを感じ取ったのか翼がそんなことを言う。


「なんでですか?」


 新井も不思議に思ったのか疑問符を浮かべて翼に質問をする。


「いやまぁ、純粋に面倒ごとに首をつっこむのはあまり良くないことなんだけどさ、それに加えて彼女は……」

「あっ、手を掴まれちゃってます。さすがにマズイんじゃ……」


 とそこまで翼が言いかけた所で長坂さんは男の1人に手を掴まれかなり事態は緊迫した方向へと向かっていた。……さすがにここまで来ると無視できないな。翼の話を聞いてからにしたかったがしょうがない。


「まぁいいや。話は助けた後だ」


 俺はその場から駆け出すと長坂さんの元へと向かう。


「あんっ? お前だれよ?」

「今、いいとこだから邪魔すんじゃねぇよ」


 俺が姿を現わすと男2人が俺に食ってかかる。そして手早く終わらせたい俺はそんな2人に返事はすることなく2人に一瞬で近づくと縄で締め上げる。


「「はっ?」」


 なにが起こったのかまるで理解出来ていない2人をそのまま電柱へと縛りつけると俺は息をつき、顔をうつむかせている長坂さんの元へと駆け寄る。


「大丈夫だったか? 怪我は? 一応、警察に言っておいた方が……」



 *


「あ〜ぁ、伊賀先輩行っちゃいましたね。まぁ、伊賀先輩らしいですけど。というかなんで翼先輩は助けるのに少し反対してたんですか?」


 私は一瞬で長坂さんの所へと行ってしまった光太郎にぃの背中を見ながら翼先輩に答えの続きを尋ねる。翼先輩は優しい人だから反応なんてしないと思ってたのにさっきしてたからなぁ。少し気になる。


「いや、まぁ僕って割とみんなと仲良くしたいタイプだからさ、入学当初彼女と話したことがあるんだけどさ」

「はい」

「というか噂とかでもそうで、実際にそうなんだけど彼女。長坂 可憐かれんさんはさ、とても自信家でね自己中心的で若干厄介な性格をしてるというか、めんどくさい性格してるんだよね……」


 すると翼先輩は少し答えづらそうに頰をかきながらそんなことを言うのだった。



 *


「別に……………ですの」

「ん?」


 俺が近寄ると長坂さんが声を漏らすがなにを言っているのか分からないので俺は聞き返す。すると、


「私1人でどうとでもなりましたのっ。調子に乗らないでくださいっ!!!」


 長坂さんは顔を上げるとそんなことを大きな声で言い俺に敵意のこもった視線を向けるのだった。




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 次回「アイドルさんに噛み付かれました」


 なんか面倒くさいのが登場しましたね。

 星や応援……良かったらお願いします。

 

 あと1話完結の短編書きました。良かったら是非!

「今年の国民的アイドルな幼馴染からの誕生日プレゼントがまさかの幼馴染本人だった」

 https://kakuyomu.jp/works/16817330651176757850

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