身代わり令嬢の華麗なる復讐
仲村 嘉高
第1話:伯爵家と侯爵家
フェデリーカ・ティツィアーノは伯爵家令嬢である。
領地経営には成功しており、領地の特産品を扱った商会も運営している。
きちんとした貴族の令嬢としての教育を受けており、淑女として申し分の無い女性に育っていた。
年齢は12歳。
来月から貴族の義務教育である、国立の学校へ通う事に決まっている。
ちょっとおっとりした父親と、社交界の華と呼ばれる母親、そして優秀な二人の兄。
それがフェデリーカの家族だ。
兄二人には既に婚約者がおり、とても仲睦まじい様子を見せ、フェデリーカの乙女心を刺激していた。
平凡ながらも幸せな日々を過ごしていたフェデリーカの元へ、婚約の話が舞い込んだ。
格上のベッラノーヴァ侯爵家嫡男、スティーグとの縁談だった。
なぜ?一面識も無いのに?
そう思ったのはフェデリーカだけではなく、家族全員が同じ事を思っていた。
「うちの特産品の繊維があるだろう?あれを使った、高級な何かを作ろうって業務提携の話が出てるんだよね」
曖昧な話過ぎて大丈夫なのか心配になるが、そこは伯爵家当主なので騙される事は無い……はすだ。
「その流れなのかなぁ?断っても良いよ、フェディ」
父親のフランチェスコがフェデリーカに確認する。
別に政略結婚しなければいけない理由は無いし、断った事により無くなる事業なら、それはそれで別にティツィアーノ家としては問題無い。
「婚約から始まる関係も有ると思うの」
フェデリーカは心配そうにする父親へ笑顔を向ける。
「会うだけ会ってみるわ」
フェデリーカの気持ちを優先する事を前提に、侯爵家へと返事がされた。
ベッラノーヴァ侯爵家とは、
両家の両親と当事者の計六人。
ティツィアーノ家の兄二人も参加を希望したが、さすがに両親が止めた。
ちょっと良いレストランの個室で、食事の時間を避けての見合い。
店側は慣れているのか、アフタヌーンティーセットを用意し、呼び鈴を置いて早々に部屋を出て行った。
ケーキが美味しいと評判のレストランなのでケーキを選ぶのを楽しみにしていたフェデリーカは、ちょっと残念そうに顔を曇らせた。
目の前から小さく舌打ちが聞こえた。
え?と思ってフェデリーカが視線を向けると、ニコリと微笑む見合い相手のスティーグと目が合う。
気のせいだった?とフェデリーカも笑顔を返す。
その後、当たり障りのない自己紹介をして、翌週には植物園でのデートをする約束をした。
植物園でのデートも卒なく終わり、また翌週には街でのデートをし、学校への入学直前に、二人の婚約は成立した。
余りに性急な婚約に伯爵家は最初難色を示したが、スティーグが乗り気であり、学校でフェデリーカが他の男子生徒に粉を掛けられるのが心配だと言っている、との侯爵家の言葉を信じて了承した。
勿論、その間にスティーグの調査は行われた。
特に女性関係も無く、暴力などの問題行動も無かった。
しかしその後、その調査が甘かった事をティツィアーノ伯爵家は知る事になる。
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