第7話 学校で噂に「綾瀬さんと付き合ってんの?」

朝、教室に行くと、悠介が俺の席に飛んできた。


「おい。昨日、綾瀬さんの家に行った?」

「え?どうしてそれを?」

「マジかよ!まさか本当だったのか……」


悠介はとても驚いた顔をした。


「昨日、圭太と綾瀬さんが校門から出るところ見た奴がいて、跡をつけたらしいんだ。そしたら圭太が家に入って行ったって」

「跡つけられてたのかよ……」


はあーと俺は深いため息をついた。

この学校にプライバシーはないのか。


「がっつり噂になってるぜ」

「そりゃそうだよな……」


我が高校の「姫様」の家に、陰キャが入ったんだもんな。


「で、綾瀬さんの家で何してたんだよ?」

「……普通に話しただけだよ」

「普通に話すだけなら、別に家まで呼ばなくてもいいだろ?」


ずいっと悠介は顔を近づけてきた。

なんとしても、真実を聞き出すつもりだ。


「俺にだけ、教えてくれよ。絶対に誰にも言わないから」

「実は……」


親友の悠介なら信用できると思って、俺は昨日のことを話した。

もちろん、キスのことは除いてだが。


「圭太がパパで、綾瀬さんがママ……?やべえ!すげえ羨ましいじゃん!」

「ば、バカ!声がでかいって……」


他のクラスメイトの視線が、俺たちに集まっていた。


「すまんすまん。ビックリすぎてついつい……」

「絶対に秘密にしてくれ」

「わかった、わかったよ」


学校一の美少女と「夫婦ごっこ」をしているなんて、そんなことがみんなに知られたら、大変なことになる。


綾瀬さんには男子にも女子にもたくさんファンがいる。

下手したら、学校中を敵に回すことになるかも……


「それより聞いたか?飛騨が太田に捨てられたって話——」


悠介が言いかけた時、


「おはよう!ケータ!」


綾瀬さんが俺に挨拶してきた。

教室に入ってきて、真っ先に俺のところに。

教室がざわついた。


「お、おはよう……綾瀬さん」

「うーん?元気がないなー!体調悪いの?」

「そうじゃないけど……」

「熱あるのかな?」


綾瀬さんは髪をかき上げて、額をくっつけた。

近かすぎる!

綾瀬さんのきれいな顔が、ドアップだ。

ふわっと、甘く爽やかないい匂いがする……


「熱はないみたいだね……あと、綾瀬さんじゃなくて、未来≪ミク≫って呼んで!」

「み、未来……」

「昼休み、一緒にご飯食べよう。屋上に来てね!」

「お、おう……」

「またね!」


風のように、俺の席から陽キャグループの元へ帰って行った。


「……お前、綾瀬さんと付き合ってるよな?」

「いやいや、付き合ってないよ」

「嘘こけ!さっき、おでことおでこをくっつけてただろ。完全に彼女だ!」

「本当違うって」

「信じられるか!クソ陰キャのくせにー」


悠介が俺を羽交締めにする。


「この、このー!」

「いてえよ!」


これからいろいろ面倒臭いことになりそうだ。




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