(02 本編後の話)

 ※後談(超短編) ―絋夢視点―


 風呂から出た後は、リビングのソファに座ってひたすら時計を見つめた。

 2階に上がってから1時間は経過している。

 ……瑠惟が帰って来ない。

「すぐ帰るって言ってたじゃねぇか……嘘つきっ」

 本当は瑠惟の手伝いをしたいけど、一人の方が捗ると追い返されるのがオチだ。

「はぁ」

 息を吐いて、瑠惟の寝室に入り込んだ。

 形式的には分かたれた部屋。

 実際は別々に寝る事はほとんど無い。

 大体は瑠惟の部屋で寄り添って寝ている。

 勢いよくベッドに飛び込んで枕に顔を埋めた。

 甘いシャンプーの香りがする。

 同じものを使っているのだから自分からも香っているのだろうが、愛しい人のものならまた別だ。

 ぎゅっと枕を抱き込んでいると、瞼が重く閉じてきた。

 ウトウトとしだした頃、「ただいま」という瑠惟の声が聞こえた。

 起きて瑠惟の元に駆け寄ろうと考えたが、思った以上に疲れていたらしく、身体が重い。それで、瑠惟が気付くまでこのままでいようと思い直した。

「ひろー?」

 リビングから聞こえていた声が段々と近づいてくる。

「ひろっ?」

 寝室の扉が開いたと思ったら「わぁ絋っ!!」という大声が聞こえた。

 寝たフリをするつもりだったのが、あまりの声の大きさに驚いて目を開けてしまった。

 俺がココに寝てたのに驚いたのか?

 そう考えていると、瑠惟の手が俺の頭に被さっていたタオルに伸びて、わしゃわしゃと拭き始める。

「ちゃんと乾かさないと風邪引くだろ!!」

 そっちかよ……。

 そのまま瑠惟に凭れかかると、拭き辛かったのか押し戻された。それでもめげずに凭れると諦めたように抱き留める。

「絋の髪、甘い匂いがする」

 俺の髪に頬擦りしながら呟いた瑠惟に思わず笑ってしまった。


 ねぇさっき俺も同じ事思ったよ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る