箱庭ライフ―「箱庭と猫」番外編―

山本陽之介

第1話 プロローグ

 俺の名前はレオ。


 職人国家アイゼン内の南側。ザフィア辺境伯領の端の端にある、人口4000人程度の町、アハートで、親父の営む製作屋の手伝いをしながら暮らしている17歳だ。


 この世界での成人は18歳。あと1年で俺も成人することになる。


 工房主である父オスカーと、美しい母君、エルゼ。長男のマリウス。そして、俺。家族4人で慎ましく暮らしている。


 因みに〝製作屋〟っていうのは簡単に言うと、鍛冶・彫金・木工・裁縫・革細工・錬金などを一手に担う、製作における〝何でも屋〟って感じだ。


 店自体はこじんまりしているし、分りづらい場所――雑木林の中――にあるんだけど、南区は製作系の店がうち以外に少ないということもあって、それなりに成り立っている。


 俺はそこの次男坊として生まれ、幼い頃から親父や兄貴の後姿を見ながら育ってきた。


 俺の特徴としては、母親譲りのシルバーブロンドの髪を短めに整え、アップバングし、父親譲りのダークブラウンの瞳を持っている。


 身長は平均よりやや高いといったところかな? まぁ、小さくはない。痩せ過ぎてもいなけりゃ、太ってもいない。標準的なスタイルである。 



 俺は、生まれた時に聖霊様から【使役術:特殊猫≒鍵】という謎の才能を賜った。


 その謎を確かめるべく物心ついた頃から、町で見掛けた猫に、自身の才能である【使役術:特殊猫≒鍵】を行使し続けてきたのだが、結局なんの成果も得ることなく、17歳を迎えたのである。



 だが先日、俺の前に一匹の黒猫が現れた。そしてその黒猫は、こともあろうか〝喋った〟のである。


 その喋る黒猫は、聖霊様からの加護を賜り進化した〝アンシャ〟という新たな種族になり、その数は八匹いるということを教えてくれた。


 因みにこの黒猫は、闇の大聖霊オスクネスの御加護を賜っている。


 そして、俺の才能である【使役術:特殊猫≒鍵】をその喋る黒猫、〝アンシャ〟に行使した結果、見事主従の関係を結ぶことが出来たのである。


 俺はその黒猫に〝ノワル〟という名前を与えると、黒猫ノワルは新たな魔法を獲得することとなった。


 獲得した魔法の内容については、少しあとに知ることになったのだが、身体が大きくなる倍化魔法≪ラピグロ≫と、ヒト化する魔法≪ヒュマジオン≫という無属性魔法だった。


 更に、ノワルと出会った翌日には、アンシャ達を従える〝真の主〟の証である〝鍵〟をノワルから受け取り、俺自身のマナをその鍵に込めた。


 その後、〝真の主〟として認められた俺は、ノワルに促され、その鍵を使ってみた。


 すると、なんとそこに〝ドア〟が少し浮いた状態で顕現したのである。


 顕現したドアを開き、通り抜けると、そこは聖霊王ベル・ラシルが別次元に創ったディメンションガーデン。通称〝聖霊王の箱庭〟だったのだ。




 これは、俺とアンシャ達が共に箱庭で過ごした日々の、なんてことのない記録である。

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