Episode.19 課外学習(4)
「それじゃ、お互い頑張ろうか」
昼食を終えて軽い食休みを済ませた六人は、湖のほとりに並んで立っていた。
「さっきも言った通り、15分に一回陸に上がってくること。異変があったら大声で助けを求めること」
アイラの告げた諸注意に元気よく返事をしたリオンに続き、各々が適当な返事をする。クラインが軽く指を振ると、アイラ達の周辺を光が漂い始めた。
「これで一応満足に探索できるはずだよ。このくらいの出力なら3時間はもつかな」
どうだ参ったか、とでも言いたげな表情のクラインを軽く受け流したアイラは、リオンとユウカの上着を回収して畳む。
「今日のアイラ、お母さんみたい」
リオンに笑われて、アイラの顔に疑問符が浮かんだ。
「…そう?そんなことないと思うけど……」
2人分の上着を丁寧に畳む手元を指さしてだってそうでしょと言うリオンに、アイラの疑問は深まるばかりだった。
―♦――♦――♦――♦――♦―
数時間後、六人は再びテーブルを囲んでいた。
「見つかったかい?」
「そう簡単に見つかるなら苦労はしてないよ」
濡れた髪をリオンの魔法で乾かしてもらいながら、アイラがクラインに嫌味な返事をする。クラインは、すっかり慣れっこだとでも言いたげに肩を竦めた。
「そもそも、ここ150年は目撃情報がない魚をどう探せっていうの」
問えば、目撃情報がないからだよと返された。首を傾げると、クラインは咳払いをひとつして得意げに語り出した。
「
「…なった、けど…それがどう関係してるの?」
アイラの質問に、クラインは待ってましたとばかりに胸を張る。
「彼らは湖の底に卵を産み付けるんだ。けれどこの湖では、魔力は水底に行けば行くほど薄くなる。だから卵が孵るまでに時間がかかるんだよ」
だから、ちょうど孵る時期だ。そう締めくくられたクラインの言葉と同時に、リオンの送り続けてくれていた熱風も止まった。
「ありがとう、リオン……それで、どうしてそれを最初に言ってくれなかったの?言ってくれれば底の方を探したのに」
アイラの言葉にまた肩をすくめてたクラインは、それじゃつまらないだろうと口にした。
「君たちが必死になって探しているのを見たかったんだよ」
「嫌なヤツ。1日無駄にした」
「まぁまぁ……それじゃあ、明日はもう少し底に行ってみましょうか。卵だけでも見つかれば御の字よ」
拗ねてしまったアイラを宥めながら、ユウカがそう取りまとめた。
「じゃ、明日の予定もけってーい!夜ご飯までまだ時間あるし、お部屋に戻ってゆっくりしようよ〜!」
リオンの元気な声と共に、各々が立ち上がった。課外学習の一日目は、ゆっくりと幕を閉じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます