第6話 F高新入生歓迎会 さっそく正体バレました??

 「ほんっっっとに迷惑かけてばかりですまないんだが、蒼城ちゃん送ってやってくれ」

 「なんかそんな予感はしてた」


 土下座する解を横目に、俺はそう返事をし、茶を啜る。あ〜いい茶だ。

 

「ま、仕方がないな。蒼城が酒を飲むことを止められなかった俺にも少なかれ責任はある」

「そう言ってもらえると助かる……!!」

「あそこで止められたら――――な」


 俺はどこか遠いところを見つめるようにただの木の板を見つめ、ふと思ったことを口にする。


「そういえば、誰か蒼城の家知ってるのか?」


「「「「――――――――」」」」


「ま、そうだよな」

「いやほんとすまん」

「いいよ。むしろ知ってたら逆に引くから」


 出会って初日で住所知ってるとか、そいつ完全にヤリにきてるから。というか出会って間もないのに住所教えるとか警戒心無さすぎて笑える。いや、笑えんか。


「途中で起きてくれることを祈るか―――」

「いや、その必要はない」


 諦観している解を一蹴し、グッと茶を飲み干した俺は今もまだ寝ている蒼城のもとに向かう。


「何をするつもり……まさか生徒手帳――でもF高生徒手帳には住所は書かれてないはずだ」


 解が解を探し出そうとしているなか、俺は蒼城のポケットから一台のゴールデンピンク色をした、女の子らしいスマホを取り出す。


「ま、まさか――――――」

「最近のスマホは指紋なり顔なりでパスワードを打たずに済むからな。幸いにもここには蒼城本人がいることだし」

「――――見るのか、それには覚悟が必要だぞ」


 逡巡する解、先ほどまで割り勘なり帰りの準備なりで、こちらを見てなかったF高生も今は目を点にしてこちらを見ている。


「見るさ。じゃないと俺帰れんし」

「うわわわわわ!!!バカ―――――!!」


 叫びが聞こえたかと思うとめいちゃんが俺にダイブを決め、俺の手から蒼城のスマホを強奪していく。


「何しようとしてるの!?男の子はダメに決まってるじゃん!!グーだよグー!!えい!めいちゃんパンチ!!私が見るから秋次はそこで正座!!」


 俺はめいちゃんパンチを腹に食らった、ダサい名前とは裏腹にめっちゃ痛いんだが。ちょっとした茶番じゃん。何で俺正座させられてるの?


 とは言わない。なぜならめいちゃんはさっきのことから察せると思うが意外と男前だし腕力ゴリラだから。


「何か言った!?」

「イヤ、何も言ってない」


 ふぅ、野生の感とは恐ろしいものだ。


「あれ?」


 俺が安堵の息をつく中、蒼城のスマホを閲覧し始めためいちゃんが疑問符を浮かべる。


 (ーーーーーーーーん?)


 なんだか嫌な予感がする。蒼城は最後に何の目的でスマホを触っていた?もし画面をそのままにスリープしてたとしたらーーーー


「Right、寧々ちゃんの友達だったの?」


 しまったと思ったが時すでに遅し。


「「「……………えええええええ???」」」


 周りのF高生が固まっていた。


「嘘ですよね先輩、エッチな先輩、ほんとにRightさんなんですか?あーでも言動が似ている気がします」

「マジ!?激アツ展開じゃないすか!先輩相互なりましょうよ!そしたら俺もゆずちゃんと――」

「とりあえずエンカ出来たことですしビンタさせてもらっていいですか?グーで」


 そうだな、言動似てるな、てか本人だし、それとそこの熱血はさっき見捨てたから相互しないし、あとついでにそれはビンタじゃなくて殴るって言うんだ。


「はぁ」


 思わずため息が出てしまう。まさかこんなことでバレるとは……F高生でゆずと気軽に絡んでるのって俺くらいだし、フォロワー50万人いるし、というかF高生だし、意外と有名なんだよなぁ。

 

「はは、俺の彼女がごめん」

「今日二回目の土下座しとく?」

「それじゃあ――――」

「待て、冗談だ」


 そう言って解から目を離し、その彼女の方に目を向ける。


「ご、ごめんね〜いえ、ごめんなさい、ほんっとうにすいませんでした」

「いいから、スマホ貸して?」

「え?いやでも……」

「貸して?」

「はい。誠にすみませんでした」


 謝罪と共にスマホをこちらに渡してくるめいちゃん。もはやこうなってはめいちゃんは男子だからダメとか言えないのだ。


「結構近いな……」


 某マップアプリを開き『自宅』の位置を確かめる。多分俺の家から5分もしない。


 「それじゃ、俺もう行くわ」

 「お、おう。気をつけてな」

 「ん」

 「えー先輩もう行くんですか?それより今からゆずちゃんに電話して下さいよー」

 「あっ!私のlitterアカウントのユーザーネーム、ミナマサなんでフォローよろしくお願いしますね!」

 「あっ抜け駆けすんなよ!俺のアカウントのユーザーネームはーーーー」


 俺はそいつらの話を無視し、蒼城をお姫抱っこして出口に向かう。かまってやったら永遠に話す気がする。


「あそうだ」


 俺は思い出したようにみんなの所にとんぼ返りする。


 「おかえり?」


 複雑そうな表情で解が迎えてくれた。そんな解の目の前に一万円札を4枚置く。


「これは??」

「口止め料だ。喜べ、今日は俺の奢りだ」

「「「「おおおおおおお!!!」」」」

「お前ら絶対に誰にもこの子と言うんじゃねえぞ!」

 

 一応ながら俺は意外と色々なとこで稼いでたりするのでこのくらいどうって事ない。


 その盛り上がりを最後に俺と蒼城は店を出た。


 


 


 

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