第13話 遅刻

 私は、遅刻しそうで必死で自転車を飛ばしていた。


 どうしてもあの電車に乗らねばならない。


 でないと、また目の前で守衛さんに校門を閉められ、遅刻の理由を書いた紙を提出させられる。


 遅刻の紙が一定数たまると罰則があるし、この前、懇談会に行った母にも怒られたばかりだ。


「なんや、あの遅刻の紙のたばはっ。


 それに遅刻の理由が、雨が降ったから、とか、布団からでられなかったから、とか、学校が遠いから、とか、まともな理由にならん事ばっかしやんか!


 恥ずかしゅうて、顔から火が出そうやったわ!」


 うーん、ほんまに顔から火ぃ出して、その紙、燃やしてもろてもかまへんかったのやけど……


 いやいや、そんなこと考えてる場合やない。


 今は自転車こぐんや、駅までこぎ続けるんやぁぁぁぁ。


 それにしても、えらいさっきからこの自転車、重いなぁ。


 まるで後ろから、何かに引っ張られてるみたいや。


 と思っていたら、後ろで、バシッ!! と激しい音がして、急に自転車が軽くなり、私は前につんのめりそうになった。


 さすがに自転車からおり、後ろを見た。


 なんと、荷台用のゴムロープの金具が、後輪のスポークに引っ掛かり、後輪の回転につれゴムロープがほどけていって、ぐるぐる巻きつき、それでも私がこぎ続けたせいで、ついにゴムロープが千切ちぎれたのだ。


 うわぁ、ようこんな太いゴムロープ千切ちぎれたなぁ。


 女子高生パワー、すごいやん。


 と、感心しているうちに、電車は行ってしまった。


 遅刻の理由は、「ゴムロープが巻き付いた自転車をこいで、それが切れて、自分のパワーに感心したから」と、いつもよりは詳しく書いた。

 

 遅刻のまともな理由にならない事を書く私は、クセモノ! であった。

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