第4話004「探索者《シーカー》と探索者集団《シーカー・クラン》の誕生」



——それから一年後の2000年7月


 世界各国でダンジョン攻略が加速度的に進んでいく中、今度は『人間』にある異変・・が起きた。⋯⋯⋯⋯『ステータス画面』の出現である。


 きっかけは、日本のアニメ好きの10代オタクが「ステータスオープン!」と厨二的な遊びをしていたら本当に目の前に『ステータス画面』が現れたところから始まった。


 ただ奇妙なのは、ダンジョンが出現した一年前にもよくネットでは「ステータス画面とか出てくるんじゃね?」と冗談半分で話題になっていたことがあり、実際にそれを試した奴らはいっぱいいたがその時はそんなことはなかったのだ。


 しかし、それが一年後、ステータス画面が出現したということで「どゆこと?」と大騒ぎとなった。


 しかも、そのステータスの項目には『レベル』『魔法』『スキル』とあったので、それを見た多くの者たちは「こ、これって、俺たちにも魔法とかスキルが使えるってことぉぉ〜〜〜っ?!」となり、さらに騒ぎを加速させることとなった。⋯⋯まー俺がこの世界に転移したときと同じ感じかな?


 しかし、その後の調査で「魔法やスキルは魔力の質や量によって獲得できる・できないがある」とか「ステータス画面の表示自体に魔力は関係ない」ということがわかると多くの民衆が落胆した。


 実際、魔法やスキルが獲得できる者は最初はかなり少なかったらしい。⋯⋯⋯⋯が、現在は以前に比べて魔法やスキルを獲得できる者が増えたらしい。


 これには「ダンジョンが誕生して、それが何か人体に少しずつ影響したから時間が経つにつれて魔法やスキルを獲得できるようになったんじゃないか」と専門家は一応の見解を述べているが、しかし解明までには至っていない。


 ということで、当時はまだ『魔法やスキルを得られるだけの質や量の魔力を持つ特定の人間』は限られていたこともあって、その人たちは世間から羨望の眼差しを向けられることとなる。


 さらに、魔法やスキルを獲得できた者たちはダンジョン内で魔物と戦うと、レベルが上がって『身体能力』を大幅に向上させ超人的な強さを身につけていたので、余計に『有名人』とか『英雄』的な扱いをされていったらしい。


 しかし、そんな矢先、彼らの力が『軍事にもつながる』ということに世界が気づくと、世界のパワーバランスが崩れないかという懸念が世間に一気に広まることとなり、同時に、彼らも自分達が「人殺しの道具にされるのではないか」と動揺が走った。


 だが、このときダンジョン事業を展開する『現・権力者たち』がすぐに声明を発表。


「彼らの軍事転用は一切認めない。もし、利用する国がいた場合、それ相応の厳罰処分を下す! 現在はダンジョン攻略・解明を最優先とするっ!!」


 と、かなり厳しい言明を発表。それはネットだけでなくテレビやラジオといった全メディアを使って大々的に発表された。


 これにより、彼らの軍事転用を禁止する世界的な条約が作られる。この時、彼らの名称を『探索者シーカー』と呼ぶこととなり、その条約の名称は『探索者シーカー軍事転用禁止条約』となった。


 この条約にはほとんどの国が合意することとなり、結果戦争が起こることもなく、世界のパワーバランスは維持されることで解決となった。


 ちなみに、このタイミングで探索者シーカーを管理・運用する機関⋯⋯⋯⋯『探索者シーカーギルド:インフィニティ』が誕生。以降、現在に至っている。


 こうして『ダンジョン攻略と解明』を最優先した現在の社会構造が誕生した。



********************



「なるほど。だから今でも『探索者シーカー』の社会的役割は大きいんだな。ていうか、昔はもっと数が少なかったわけだから、英雄扱いされたのもわかる気がする。⋯⋯にしても、こうやって見ると、改めて俺のいた地球とは違う発展を遂げたんだな⋯⋯」


 と、俺はおおまかにだが、世界のことを知ったことで改めて「本当に別の地球なんだな⋯⋯」と実感させられた。


探索者シーカーって誰でもなれるわけじゃないのか⋯⋯」


 ラノベ的設定だと、異世界ものとかでは『冒険者』なんて基本誰でもなれるようなイメージだったので、『探索者シーカー』が誰にでもなれるものではないと知って、俺は「意外と敷居の高い職業なんだな」と感心するも、


「俺になれるだろうか?」


 と、少し不安になった。せっかく自称神様から『恩寵ギフト』という特殊な能力をもらったのに、もしも魔法やスキルといったものがこの能力では獲得できないとなれば『探索者シーカー』になれないのだから。


「どうせなら、魔法もスキルも使ってみたいし、ダンジョンにも入ってみたい」


 ということで、俺は『恩寵ギフト』が魔法やスキルを獲得できるのかどうかについて考えてみた。

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