第5話 国家情報保安局

「遅かったですね、どうでしたか?」


 部屋に戻ってくると、なぜか国家情報保安局の二人がハルキの部屋に待機していた。


「んなっ?! なんでお前がいるんだよ、眼鏡」


「もう、イッコです! 名前で呼んでください。ハルキさん」


「うるせえ、馴れ馴れしいんだよ! だいたいなんで俺の部屋にいるんだよ」


「いえ、この部屋が一番安全だからですよ」


 そう言うと、イッコは部屋の奥まで行きカーテンを少し開ける。


「今、ホリが調べさせていますが……」


「ああ、スキンヘッドも来てんのか。しっかし面倒くさいことになったなぁ」

 ハルキは頭を掻きながらため息をつく。


 国家情報保安局が登場してきたという事は、カタデリー信仰に関する情報の秘匿及び削除が目的であり、イレイサーの遺物の憑き者落としとは根本的に内容が異なってくる。


「面倒くさいのはこちらのセリフです。なぜあなた方がここにいるのか、そしてなぜすでに関わってしまっているのか。説明いただけます?」

 イッコは眼鏡のブリッジを押し上げながら怒りの込められた口調で言った。


 しかし、そんなイッコの態度などお構いなしにハルキは椅子に座ると机の上に肘を乗せ、頬杖をついた。


「知らないよ、気付いたら関わってたんだから。それよりありゃあ何なんだ? いきなり現れやがって。しかも、あいつのあの能力は……」

 そこまで言うとハルキは言葉を止めた。


「能力? やはり何か知っているんですね? 教えなさい!」

 食い気味にイッコが身を乗り出して聞いてくる。


 ハルキは顔をしかめながら、 あー、と声を出し、どう答えるべきか悩んでいる様子だったが、諦めたように言う。


「おいニッタ、あの白仮面を見せてやれ」


「了解っす」

 ニッタは持っていた白仮面をテーブルの上に置く。


「これは! まさかこんなところで出会えるなんて! 本当に存在するなんて、信じられない…… えっ?」

 それを見た瞬間、イッコの目の色が変わった。


「ハルキさん」


「ん?」


「なぜここに穴が開いているんでしょう?」

 と仮面の穴を指差す。


 それはハルキが撃った銃弾の跡だった。

 その質問にハルキは目をそらしながら、 う~ん、まぁ、いろいろあってな…… と歯切れの悪い返事をした。


 するとイッコはその仮面を両手で包み込むようにして持つと、祈るような姿勢になり、じっとその仮面を見つめながら話し始めた。


「私はずっと疑問だったんです。どうしてあなたは、ハルキさんはイレイサーなのかと。それはハルキさん、あなたが物の価値を全く考慮しない人だったからなのですね!!」


「いや、そうは言うけどよ。そうしないと俺たちはその仮面に殺されてたよ?」


「死ねばよかったのに……」


「「え?」」


「コホン。まあやってしまったものは仕方ありませんが…… 今後、このような事がないように注意してください!」


「今、死ねばいいのにっていったよね?」


「はい、言ったっす……」

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