第3話

   

 今にして思えば失礼な話だが……。

 彼女の顔を見た瞬間、僕は「先が思いやられる」と感じてしまった。個人的に親しく話したことはないけれど、同じ騎士学院に通う学生として、少しはレジーナを知っていたからだ。

 剣や槍などにけたタイプではなく、いわゆる魔法士の系統。ただし攻撃魔法は全く使えず、発動できるのは回復魔法と解毒魔法のみだという。

 戦力的に頼りになる相棒とは思えなかった。


 もちろん、実際の冒険者パーティーのメンバーとして考えれば、回復魔法や解毒魔法の使い手は重宝されるだろう。回復系アイテムの消耗を抑えられるからだ。

 しかし、卒業試験はわずか三時間であり、アイテムの出し惜しみをしている場合ではない。その程度ならば、回復ポーションと解毒ポーションで十分。

 むしろアイテムでは補えないような、実戦的な攻撃力が欲しい状況だった。


 友人たちからも揶揄からかわれた。

「頑張れよ、ジャック」

「お前、期待されてるんだぜ」

 卒業試験の組み合わせはランダムではなく、学生たちの実力を考慮して、教官の判断により決められているらしい。ランダムにしてしまうと、例えば回復系魔法士の二人組みたいな、全く戦えないコンビも出来てしまうからだろう。

 なるほど、それならば、レジーナのように「戦えない」と見做された学生のパートナーには、それなりに戦える者がてがわれるはず。そこに選ばれた僕は、高く評価されていたに違いない。

 とはいえ、そのせいで卒業試験の結果が悪くなり、最終的な点数も下がるのであれば、本末転倒としか思えなかった。

 このように、いざ卒業試験が始まるまで、僕はレジーナをお荷物だと考えていたのだが……。

   

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