卒業試験の相棒は

烏川 ハル

第1話

   

「ねえ、あそこ。なんだか怪しくない?」

 鬱蒼とした森の中、隣を歩く金髪少女が、僕の肩をポンと叩く。凛とした青い瞳には、少しだけ不安の色も浮かんでいた。

 この辺りは太い木々が見られず、飾りみたいな低木ばかりのエリアだ。彼女が指し示しているのは、進行方向のかなり先で、小道の左側にある緑の茂みだった。

「うん、わかった。レジーナは下がって」

 彼女を後ろ手にかばう格好で、問題の茂みに少しずつ歩み寄ると……。


「ギギッ……!」

 鳴き声を上げながら、ゴブリンが飛び出してきた。

 数は二匹。

 おそらく、僕たちがすぐ横を通りかかるまで待って、こちらの不意をつく形で襲うつもりだったのだろう。でも隠れているのを見破られて、渋々出てきたに違いない。


 しょせん相手は最下級のゴブリンだ。想定外の方角から急襲されたら手こずるかもしれないが、いるとわかっている場所から出てくるのであれば、僕の敵ではなかった。

「ハッ!」

 気合の声と共に剣を一閃。一匹を仕留めた勢いのまま、返す刀でもう一匹を一刀両断。あっという間に、戦闘を終わらせるのだった。

   

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