第17話 整理
「どうだった?ちゃんと話し合えたか?」
今までは2年話していなくても何も思わなかった永沢の声が、たった1ヶ月経っただけなのに有難く感じた。
「お前は……、もし彼女がポリアモリーだと分かったら、どうする……?」
何かをグッと堪えながら三日月が放った言葉によって、あれだけフランクに話してくる永沢がぴたり、と話さなくなった。
静寂が続く。
「……あくまでも俺がな、っていう意見だけど…。」
一呼吸置いてから、永沢が続ける。
「俺だったら、内容聞いて、なんとか続けようと思うかな。自分を殺しても、彼女と付き合っていたいと思っちゃうわ。でも俺の場合はまだ付き合って2年も経たないからなぁ。」
予想もしない回答に、三日月は大きく目を開いた。
三日月は、まさか永沢が自分と同じ判断をするとは思わなかった。
否、ここ1ヶ月の月日が、三日月を完全否定しているからだった。
「お前は学生時代からだし、4年以上も付き合ってた上に就職も含め将来を約束したもんな。婚約もしてるし、そりゃ割り切れないだろうけど……、お前の為を思って言わせてもらうわ。」
ふぅ、と一呼吸置いて、大きく息を吸ってから永沢が続ける。
「それでお前は幸せか?一生一緒に居たい人が、他の男とも一緒に居るんだぞ?」
「お前が優しいのは知ってる。でも優しいと甘いは違うからな!いくら愛してる人だからって、許しちゃいけないことも、あると思うぞ。第一、そういう大事な事はこんな後になってから言われたんじゃ、悪いのはあっちだろう。」
永沢と出会ってから7年以上経つが、これ程真剣な声で、これ程厳しい言葉をかけてくれたのは初めてだった。
自分にまだ、信頼出来る人間がいたのか、と三日月はここ1ヶ月の悪夢を思い返しながら、いつの間にかぽろぽろと涙を流していた。
「これは俺の彼女が、俺が警察官辞めるか悩んでいた時にかけてくれた言葉なんだけどな……、「土が変わっても、新しいところで根を張れば良いじゃない。」って。花が好きな子だから、花にかけてくれたんだけどさ、言い得て妙だなーなんて思う訳よ。」
そこまで言って永沢は、三日月が電話越しに涙を流しているのだろうと気づいた。
少し間をあけ、自分の言葉で伝える。
「上手く言えないんだけどな……、なんというか、そこだけがお前の居場所じゃ無いよ。お前っていう大輪の花は、きっと何処でだって咲けるさ。」
永沢の心から出たこの言葉の裏には、学生時代、彼が見た三日月の凄さを裏付けていたのだった。
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