第16話 心折

「なんでこんなに言っても、私の事嫌いにならないの?」


三日月はその言葉で気づいてしまった。


───朱音は、三日月の方から捨てて欲しいのだ、と───


そんな理不尽で自分勝手な対応に、三日月の中で膨らんだ何かは、崩壊寸前だった。


いつものように、罵詈雑言の飛び交う時間が始まった。

この時間を、三日月はじっと堪えていた。

ここで反論しても、話し合いが解決する訳では無い。


そんな一方的な口撃の最中……。

「……私、貴方の家族も好きじゃない。苦手…。」

その言葉に、三日月の堪えていた何かは崩壊した。


「……あのさ、今、家族の事出す必要あった?無いよね?家族を悪く言う権利が貴方にあるの?貴方が悪いんだよね?俺の家族を悪く言うのはおかしいし、絶対許せない。ずっと貴方の罵詈雑言を聞いてたけど、これだけは流石に謝って欲しい。」


三日月は4人兄弟の次男、上に兄、下に妹が2人いる6人家族であった。

皆朱音の事を尊重し、気を使ってくれていた。

三日月にとってはかけがえのない大切な家族であり、それを彼らの話し合いに出した挙句、三日月から別れを切り出して欲しいが為に貶されたのが、自分の事よりもひどく怒りを感じたのだった。


朱音は、「それはごめん」と、小さく答えた後、そのまま寝室に籠ったのであった。


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