第14話 執着

「私……好きな人は1人じゃなくても良いと思うの。そういう考えの人間なの。4年も言えなくてごめん……。」

俯きながら、虚空を見つめながら朱音がそう伝える。


「それなら相談しよう。これから話し合ってさ、お互いの希望を擦り合わせてさ……」

三日月は慌ててそう答えた。


ここから先、この場で話しているのは三日月だけとなった。

三日月が代案や妥協点を擦り合わせて提示しても、何も反応してくれない。

20分程経過しただろうか、三日月は俯き、涙を流し始めた。

苦虫を噛み潰したような表情で、三日月は朱音に問いかける。


「……なんで先に言ってくれなかったんだ。4年前からずっと、悩みを話せるように聞いてきたし、隠すのは無しって決めてたじゃないか!」


そんな悲痛な叫びも、朱音には届かない。

まるで心に壁を張っているかのように、三日月の声だけ、彼女の心を通さなくなっているみたいだ。


「ともかく、話し合おう。もうそんな簡単な話じゃないから、1回整理してから話そう。」


朱音は終始俯いたままで、もう彼女の瞳に、三日月は映っていないかのようだった。


三日月は朱音が眠った後、リビングで1人涙を流した。

全身を耐え難い激痛が走るかのように、痛い、苦しい。

安寧だと思っていた現実や未来が、全て崩れ去っていく気分だ。


「いや……。まだ終わってない……!」

涙を拭い、一晩中打開策を模索する三日月であった

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